「徳之島国際ユースキャンプ」開始

伊仙町で始まった「徳之島国際ユースキャンプ」=29日、同町歴史民俗資料館

戦争の記憶伝承 若者の国際理解を
東京大、伊仙町と連携

 【徳之島】戦争の記憶の伝承について日本と海外の若者が相互理解を深める文化外交「徳之島国際ユースキャンプ」(東京大学先端科学技術研究センター創発戦略研究オープンラボ主催)が29日、ボスニア、韓国、日本の大学生や教授ら14人が参加して伊仙町で始まった。初日は奄美群島の日本復帰運動の歴史や戦没者慰霊の在り方などについて講演やディスカッションで交流した。来月2日まで。

 外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助事業関連。東京大学大学院人文社会研究科の西村明准教授(50)を座長とする研究会「宗教と社会の関係の検証と再構築」で取り組む戦争の記憶の伝承、相互理解と文化外交の一環。闘牛文化を通じ伊仙町と縁があるボスニアや韓国、日本の大学生が共に学ぶユースキャンプを通じて「奄美返還の歴史を出発点」とし、戦没者慰霊の在り方や捉え方について、若い世代の相互理解を促進する。

 参加しているのは戦後の欧州最悪の民族紛争が記憶に新しいボスニア・サラエボ大学の3人、韓国の江原大学3人、東京大学4人(西村准教授ゼミ生)、鹿児島大学4人(兼城糸絵准教授ゼミ生)。地元伊仙町と連携して専門家を招いた講演会や参加学生による成果発表の場の公開、戦争の記憶を中心に世界の中での「徳之島の立ち位置」を意識するイベントを目指している。

 初日(29日)は伊仙町歴史民俗資料館会議室で大久保明町長らも交えて開会式。皮切りの講演会では、同町社会教育課町誌編纂(へんさん)室の松岡由紀室長が「奄美群島の日本復帰」、西村准教授が「奄美群島の宗教史と戦争死者慰霊」についてそれぞれ講演。群島民一丸の無血運動で達成した日本復帰、復帰協議会議長として復帰運動を率い〝奄美のガンジー〟ともたたえられた泉芳朗氏(同町出身)の詩人・教育者としての人となりも英訳で伝えた。

 30日は泉芳朗頌徳(しょうとく)記念像やカムィヤキ窯跡、戦艦大和慰霊塔、特攻平和祈念碑、秋津湊の戦い跡、富山丸戦没者慰霊碑、武州丸慰霊碑など島内視察を行う。

 31日午前10時からは同町ほーらい館でシンポジウム「復帰について島の外から考える 国境地帯の戦中・戦後―ボスニアと済州島の経験から―」を開催。サラエボ大学大学院のセルマ・アリスパピッチ氏が「紛争復興後の女性たちの役割」、趙誠倫・済州大学校名誉教授が「済州島の軍用飛行場と戦争の記憶」と題してそれぞれ講演する(聴講無料)。2月1日は地元高校生らとの交流会も計画している。