大島海峡でワイン熟成

船上で設置のための作業に汗を流す瀬戸内漁業協同組合員ら


海底に設置されたワインセラー(アイスリー提供写真)

清水沖でセラー設置作業 味まろやか「新たな特産品に」
瀬戸内町

 ボトルワインを海底に沈めて熟成させる「ワインセラー」の設置作業が30日、瀬戸内町の清水沖であった。地域と協力し東京の企業が商品化を目指す事業で、大島海峡の穏やかな波の中でワインを熟成する。期間は半年間。奄美大島の海が育む海底熟成ワインは「海のテロワール」として7月に提供していく。

 手掛けるのはPR代理店の㈱アイスリー(本社・東京渋谷区、森谷悠以代表取締役)。特産品づくりや地方創生、観光振興などを目的に、瀬戸内町と連携協定を結ぶ町田酒造㈱とのトライアルを機に2020年から着手。専門家らの助言の下、調査や実証に取り組んできた。

 海底熟成は、バルト海の沈没船から引き揚げたシャンパーニュの逸話が由来で、欧米では商品化も進む。海底で寝かせることで通常より速く熟成が進み、味は「香り豊かでよりまろやかになる」という。

 セラーは繰り返し使えるセラミック製で、岡部㈱と共同開発。藻場や漁礁の機能も備えたセラーで、太陽光などが届きにくい水深約20㍍の海底で半年間熟成していく。

 この日は、赤、白、スパークリングのワイン約500本が用意され、瀬戸内漁業協同組合と町が協力の下、清水沖の大島海峡にセラー3台を沈めた。海中では組合員の潜水士3人がダイバー姿で作業。設置にあたった惠祐也さん(37)は「これを機に全国の人が瀬戸内町を知るきっかけになれば」と期待を込めた。

 今後は品質テストを続け、最終的にはワインを有料で預かるサービスとして商品化を目指す。夏の引き上げの際には集落で振る舞う計画もある。森谷代表取締役は「地域のサポートがありここまで来られた。瀬戸内にある海洋資源を生かしながら、島の人や観光客に〝いいね〟と言われる事業に育てていきたい」と話した。