奄美市で自殺防止へゲートキーパー講座

自殺に至る過程と対応について講演する神薗太基さん(31日、アマホームPLAZA)

「うつは脳の病気」

奄美市は31日、「奄美市自殺対策計画(2018年策定)」に基づき、悩みを抱える人の話を聴き相談に乗る「ゲートキーパ―養成講座」をした。姶良市でメンタルヘルスの包括的なサポートを手がけている㈱こころ機構代表で認定心理カウンセラーの神薗太基さん(32)が、自殺のサインに気づく方法や、自殺を選択する要因となるうつへの対応などについて講演した。約70人が参加した。

自殺者は、全国で年間2万人を超える。同市でも増加傾向にあり、21年は、人口10万人あたりの自殺死亡率が全国平均の16・5人を大きく上回る24・4人となった。特に男性が自殺に及ぶ比率が高く、全体の自殺者の82・5%を占める。

自殺や自傷行為に及ぶ人は、生活の中での生きづらさや困り事を抱えていることが多く、ストレスが重なり自殺に至るという。ゲートキーパーは、身近な人の変化に気づき、必要な相談先につなぐ役割を担う。

神薗さんは、「自殺念慮(願望)のある人の半数は健康問題を抱えている。生活苦、過労、家族の不和など四つ以上の要因が連鎖すると自殺に至る」と分析。「一つ一つの課題をサポートする資源はある。前兆に気づき経路を断つことが必要」と話した。

「うつは心の病気ではなく脳の病気。ストレスホルモン(コルチゾール)が放出し続ける状態が続くと、記憶をつかさどる海馬が機能しなくなり脳全体が委縮、判断できない状態に陥る」と病気のメカニズムを説明。「怠け・わがまま」などと判断せず、病気と理解した上で温かく見守ることを心掛けてほしいと続けた。

ゲートキーパーの役割は「自殺を選択するまでの変化に気づく」ことで、家族構成(死別・異動・卒業)や環境の変化があれば、じっくり腰を据えて話を聴く場を設けてほしいと話した。「ありのままに受容し、温かみのある対応を」を心掛けてほしいとも。

聴講した同市名瀬朝仁の町内会長・屋村(おくむら)賢良さん(76)は、「民生委員など多くの人が知識を得る必要がある。人と人の関係性が大事と感じた」、同市名瀬塩浜の自治会長・吉田正(まさし)さん(74)は、「自殺者の実態を知り驚いた。こうしたことを前提に住民との接し方を考えたい」と話した。