「聞き書き活動」冊子完成

完成した冊子を手に笑顔の、牧野悠汰さん(右)、嘉江美夏さん(中)、窪田柚音さん

大島北高 地域住民の体験記録
貴重な遺産、次の世代にも

 奄美市笠利町の大島北高校(松本勇二校長)は5日、地元学「聞き書き活動」の冊子を完成した。6日、同校で冊子『シマ(集落)に学ぶ~奄美市笠利町の社会・文化遺産の継承~』が披露された。松本校長は「自ら集落の人に聞き取り、記録を残すことで記憶にも残り次の世代に伝えることができる」と話し、「生徒たちは、集落で互いの助け合い“結いの心”に触れるとともに、大変貴重な体験を聞く機会となり、平和を願う心を新たにした」と語った。

 同活動は、北大島地区の貴重な社会・文化遺産を後世に引き継ぐとともに、同地区の良さや課題などを発見・考察することで、自分の進路や将来に生かすのが目的。2014年に同高OBで元奄美博物館館長の故中山清美さんの呼び掛けで始まり、今年度が節目の10年目となる。コロナ禍での中止があり第9巻の発行となった。

 今年度は、奄美群島日本復帰70周年記念のため、戦時中から米軍占領下での復帰運動の時期を中心に聞き取り。生徒16人は5グループに分かれ、奄美市笠利町の外金久、佐仁、笠利、須野、和野、節田、用安、平の8地区を回り、全19人の話者から聞き取りを行い、記録しまとめた。

 生徒たちは事前に調査した内容を基に質問事項をまとめ集落を訪問。話者の話を聞き逃さないよう、音声の録音や動画を録画し、記録としてまとめ上げた。

 和野集落を担当した、牧野悠汰さん(2年)は「地元のことをもっと知りたくて参加した。昔のことを高齢者から聞くことができる良い機会になった。昔と今の空港や道路状況などの雰囲気の違いがよく分かった」。嘉江美夏さん(同)は「島口を話すことが禁止された時代があったことに驚いた。若い時から島口やシマ唄などの伝統を伝えていく教室などが必要だと感じた」。窪田柚音さん(同)は「曽祖母が戦争体験者だったので興味があった。戦争は恐ろしいものと感じていたが、体験談を聞いてより恐ろしさが増した」と話した。

 3人は卒業後、島外へ進学するが、いずれは島に戻るか島外での生活の中で島の良さを伝えたいと話し、完成した冊子については「協力してくれた話者の人たち届けるとともに、若い人たちに読んでもらい、次の世代に伝えていってほしい」と語った。

 冊子は400部作成。市内の小中学校や教育委員会、図書館など教育機関を中心に今年度内に順次配布予定。同校は、希望者にはできるだけ配布したいとしている。問い合わせは、大島北高校電話0997・63・0005まで。