奄美希少野生生物保護増殖検討会

保護事業終了に向けて行われた奄美希少野生生物保護増殖検討会(9日、奄美市役所)

保護事業終了目指す
アマミノクロウサギなど3種 生息数回復報告受け

 2023年度奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授、委員6人)の会合が9日、奄美市役所であった。環境省は、「種の保存法」に基づき国内野生希少動植物種に指定されている奄美の希少種3種(アマミノクロウサギ・アマミヤマシギ・オオトラツグミ)の生息状況について回復傾向にあると報告。24年度から始まる新たな10か年計画で、「定量的な目標数を定め」同事業の終了を目指すとした。県、地元市町村の担当者、自然保護団体など関係機関から約50人が参加した。

 アマミノクロウサギは、沢沿いの糞粒(ふんりゅう)調査、自動撮影カメラによるモニタリングなどを集約した結果、21年から幼獣を含め増加、名瀬市街地周辺に生息域が広がっていると分析。徳之島でも増加傾向と報告された。

 アマミヤマシギは、マングース防除事業の進展とともに奄美大島では増加傾向、徳之島では、調査方法により横ばい、微増、微減などとまちまちの結果となった。

 奄美大島の固有種オオトラツグミは、23年に奄美野鳥の会が実施した調査で210羽を確認。永井弓子会長は、「高い水準を維持している」と評価した。一方、「林道の崩壊などで調査に限界がある。(録音調査などを含む)新たな調査方法を確立してほしい」との提言も行った。

 増加傾向にあるロードキル(交通事故死)についても報告された。23年度は▽アマミノクロウサギ奄美大島147件・徳之島28件▽アマミヤマシギ11件・2件(速報値)。市街地での目撃や捕獲の報告が増えている希少種のケナガネズミは59件・6件(同)。

 マングース防除事業については、根絶宣言に向けて21年度から3年分のデータを国立環境研究所の「根絶確立算出モデル」で評価、月末に行う検討会に諮るとした。

 24年度から10年の計画案には、保護事業の終了を見据え、「30%以上の減少がないエリアがないこと」などと数値目標が示された。

 同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部槇太郎所長は、「(事業終了は)前例のないことなので具体的なプロセスを決める必要がある」と話した。

 アマミノクロウサギは16年、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストで「危険」、20年には環境省レッドリストで絶滅危惧IB類(EN)として掲載されている。

 オンラインで参加した同省自然環境局野生生物課希少種保全推進室・福島誠子室長補佐によると、「(人為的な影響のある)国内希少種のリストから外れると同時に事業が終了することになる」という。