2023年3月、瀬戸内町の古仁屋港沖、大島海峡で海上自衛隊の練習艦「しまかぜ」(基準排水量4650㌧、広島県呉市)の一部が公開。鎌田愛人町長ほか町職員、自衛隊関係者、入隊予定者らが参加した
―瀬戸内町は奄美群島の中でも、特に自衛隊に対する理解が深い地域に見える。
「戦前の土壌もあるかもしれないが、自衛隊に関して言えば、海自奄美基地分遣隊が配備されてから、隊員が地域イベントへの参加や清掃活動など、地域貢献に積極的で、大規模土砂災害時も懸命に任務を果たした。陸自の瀬戸内分屯地の配備に大きな反対の声がなかったのも、これまでの奄美基地分遣隊の活動に対する、信頼があったからだと思っている」
―23年11月から瀬戸内町古仁屋の須手で始まった海自の輸送・補給基盤港湾施設の適地調査について。
「協議会では、奄美基地分遣隊の拡充とともに港湾施設の整備を強く要望している。防衛省が23年度予算で適地調査に6億円計上したのは、奄美、瀬戸内町が沖縄と九州本土を結ぶ中継拠点、輸送、補給基盤として有効な場所と評価したからだと受け止めている。しかし、施設計画は地域住民の協力があってのもの。防衛省には可能な情報開示を求めており、住民への説明はいずれかの時点で行う」
―自衛隊の誘致には積極的だが、米軍に対する考えは。
「日米共同訓練は絶対に必要。日本自身の防衛力強化とともに、日米安保条約に基づく抑止力、対処力の強化、同志国との連携が安全保障の要。(23年11月に起きた)屋久島沖の米空軍オスプレイの墜落は大変残念な事故だったが、今後も地域住民への安全性を確保の上、訓練をしてほしい」
―自衛隊施設が配備されることで、敵国の標的となり住民の命を危険にさらすという意見があるが。
「他国の軍事戦略はわからないが、日本は有事にならない外交努力をしており、同時に国際協調としての抑止力、防衛体制の強化は必要。自衛隊施設の配備が町民のみならず、国民の生命を守っていると認識している」
2019年9月1日に実施された瀬戸内町総合防災訓練の様子。集落、地区ごとに実施され、古仁屋市街地の住民は古仁屋小学校校庭でバケツリレーによる消火訓練を行った(瀬戸内町提供)
―奄美群島12市町村で瀬戸内町がいち早く、国民保護計画に基づく訓練の実施を明言した。今後の予定は。
「23年10月、総務課長補佐、防災専門監と県の危機管理防災局を訪ね、国民保護訓練について意見を交わした。県は同年1月に屋久島町への武力攻撃を想定した、住民避難の図上訓練を実施し、24年1月に国の重点訓練として本町で実動訓練を行う予定。県からは訓練結果を踏まえ、奄美を含む各離島での国民保護訓練を検討すると聞いている。すでに奄美群島各市町村の防災担当と情報共有はできており、訓練計画は奄美大島5市町村で準備を進めたいと思う」
―有事の際、行政を中心に住民の保護に努めるとするのが、現行の国民保護法の考えだが、具体的な施策はあるのか。
「県の方針が未定の中、施策は打ち出せないが、加計呂麻島・請島・与路島といった有人離島、離島の離島を有する地理的特性を踏まえた訓練計画は検討したい。しかし、実施時期も県の計画で未定のため、町民の方には引き続き、国民保護訓練の準備も兼ねて、防災訓練に参加されるよう呼び掛けたい」
―沖縄県の八重山3市町(石垣市、与那国町、竹富町)はシェルター施設の整備を国に要請したと報道があった(23年7月)。瀬戸内町は要望するか。
「国は有事の際、先島諸島の住民を九州各県に避難させる計画を24年度中に立てるとし、受け入れ先の選定、輸送手段の検討が優先事項。シェルター設置に関しては国、県の動向を注視して判断したい」
―地理的特性が似る、先島諸島など行政と安全保障に関する情報の共有、やりとりはあるか。
「先島諸島の民間防衛団体が、瀬戸内町の自衛隊誘致など取り組みについて視察に来られた際、意見を交わした。行政とは直接のやり取りはないが、より台湾に近い離島として、奄美以上の危機感を持っていると理解している。しかし、国は危機を招かないよう努力しているので、国や自衛隊を信じていただきたいと伝えたい」
―改めて町民、島民に伝えたいことはあるか。
「国民の命、住民の平和な暮らしを守るべく、日夜訓練に当たる自衛隊員への理解とともに、敬意と感謝の思いを持っていただければと思う」(2023年12月4日取材)
(かまだ・なるひと)瀬戸内町古仁屋大湊出身。2003年に町議、15年から町長(3期目)。座右の銘は名前の由来である「敬天愛人」(天を敬い人を愛する)。町自衛隊基地対策推進協議会会長