喜界町で鹿大シンポ

鹿大生が成果を報告した防災シンポジウム「喜界町の津波防災を考える」

12日から集落を調査した鹿大生や町担当者ら

津波防災、学生らが提言
集落ごとに課題や対策共有 フィールドワークで調査

 喜界町と鹿児島大学が主催する防災シンポジウム「喜界町の津波防災を考える」が15日、同町役場多目的室であった。同大学生らが町内のフィールドワークを通じてまとめたデータや集落が抱える課題を示し、その解決策などを提言。パネル討論では、区長らと意見を交わし、その集落に適した防災対策や避難への対応などを考えた。

 県離島振興協議会が助成する2023年度アイランドキャンパス事業の一環で、同町と鹿大が協働で実施。同大共通教育センターの岩船昌起教授と受講生4人が来島し、「津波地震での災害想定」をテーマに現地調査の成果を発表した。

 発表は、▽上嘉鉄の津波避難経路を検討する▽測量結果から佐手久での津波避難を考える▽町指定避難所の収容人数を再考する―の3件を報告。隈崎悦男町長はあいさつで「本町でも規模の大きな地震やそれに伴う津波が発生しており決して他人事ではない。調査を機に、自助、共助、公助を高めてほしい」と期待した。

 県の試算によると、奄美群島の太平洋沖でM8・2の地震が発生した場合、喜界町には5・1㍍の波が22分後に押し寄せるとみられる。

 発表では、理学部2年の梶原こころさんが上嘉鉄集落の住宅密集地を調査し、避難に伴う危険性などを報告。「家屋や塀の耐震性に不安があり、余震が続く場合は避難を避けるべき。車で通行できない可能性もあり、普段から両面で行動を確認すべきだ」と訴えた。

 工学部2年の土谷晃輝さんは、佐手久集落で得た測量結果から標高に焦点を当てた避難方法を提案。「同集落では5㍍の津波だと危険度は低いが、10㍍だと多くの民家が浸水する。しっかり標高を把握することで確実な避難を心掛けて」と促した。

 法文学部4年の川越日香里さん、工学部3年の豊嶋美結さんは、同町指定の避難所27か所などの収容について再考した。スフィア基準(被災者に対する人道支援の国際的な最低基準)では1人あたり4平方㍍+通路1㍍確保した場合、収容人数は町民740人(11%)だが、2平方㍍+通路0・5㍍だと1957人(30%)がカバーできる。「感染症の有無などで柔軟に対応すべき。大規模な災害ではテント利用や車中泊も検討しなければならない。要介護者への配慮も忘れないで」とアドバイスした。

 パネル討論では、各区長や町担当者、名瀬測候所職員らも加わり、津波災害の備えについて意見を交わした。岩船教授は「計画は、訓練でPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを繰り返せば、いずれはできてくる。仕組み作りは、町の防災、保健担当者を中心に、区長や集落で取り組んでほしい」と呼び掛けた。

 一行は16日、同町滝川にある気象観測局を視察。調査集落を訪れ、成果や情報、注意点などを共有した。