劇団群島、36年ぶり復活公演

受刑者と住民の交流場面を演じる劇団員たち
フィナーレでは出演者たちそろって合唱した

50人共演「格子なき牢獄」
軍政下の刑務所で群像劇描く

1970~80年代に活動した島民らでつくる演劇サークル「劇団群島」(森和正代表)で、36年ぶりとなる復活公演「格子なき牢獄(ろうごく)」が23日、奄美市名瀬のアマホームPLAZAで上演された。物語は、米軍政下での大島刑務所を舞台に、所長や受刑者、住民らが織りなす群像劇を描いた。約200人の観客らは、統治下ならではの風刺の効いた人間模様に声を上げ、心温まる〝キョラの心〟に酔いしれた。

劇団は大島高校の生徒やOBらが集い、1970年頃に結成された。団員の生活の変化などをきっかけに88年の舞台を最後に休止していたが、活動拠点となる市民交流センターが21年10月に完成。稽古のできる環境が整い復活を決めた。

脚本は森代表が、当時の所長と知人だった叔父の話に感銘を受けてフィクションとして書き下した。物語は刑務所ができた53年から日本復帰までの5年間で、大島刑務所と根瀬部にあった田院の郊外作業所で塩田炊きをする受刑者と所長の思いや葛藤を、住民との交流などを交えながら描いた。

所属する団員は9人。稽古は昨年10月から本格的に始まった。公演には、奄美高校郷土芸能部と根瀬部八月踊り保存会も共演。総勢約50人が舞台に立った。

上演では、ガジュマルの木から歴史や暮らしを俯瞰(ふかん)するケンムンをナレーション役に劇は展開した。住民との交流では、ほとんどの役者が舞台に上がり八月踊りも披露。上演が終わると大きな拍手が会場から送られた。

観客からは「久しぶりの上演に楽しい時間を過ごせた」「泉芳朗だけでなく、違う視点で復帰運動を捉えていて面白かった」といった声も出た。

受刑者役を演じた同郷土芸能部3年の桑原諒さん(18)は「緊張したけどいい経験ができた。奄美も世界自然遺産など注目されている。いつかは自分でも後世に引き継いでいきたい」と笑顔だった。森代表は「ほっとした。スムーズにできたことが何より」と胸をなでおろし、「若い人が劇に興味を抱き、軍政下の出来事を伝えるきっかけにもなれば」と話した。