原料高・物価高、人手不足は地域の業界に深刻な影響を与えている(名瀬市街地)
原料高・物価高が事業活動に深刻な影響を与えており、LCC(格安航空会社)便の運休・減便により交流人口が大幅に減少――。奄美市を中心とした島内の業界の現状は厳しい状況にあり、人手不足は後継者不在による事業承継問題、担い手不足、人材確保難に直面していることが明らかになった。
19日にあった奄美市中小企業振興会議(会長・有村修一奄美大島商工会議所会頭、委員18人)で報告されたもの。事務局の市商工政策課では、①アフターコロナ、原油物価高の現状と課題②人手不足の現状と課題―などについて、商工、建設、観光、情報、酒造、福祉などの業界団体から提出してもらい、それに基づき意見交換した。
提出内容によると、商工関係からは「コロナ収束により行動制限の緩和等で人流は活発傾向になり、主に観光関連業種でその効果を実感することができた」とする一方、昨年11月からのLCC運休により「交流人口が大幅に減少したことで、地域経済は以前のような勢いは感じられない」。また原油価格高騰では「光熱費や燃料費高騰または流通・移送費等の問題が生じている」として、それに合わせて「価格転嫁が喫緊の課題となっている」。一部の業種では価格転嫁に向けた取り組みができつつあるとみられるが、十分な価格転嫁には程遠いという。
奄美群島振興開発基金は取引先に行った今年1月時点のアンケート結果を報告。それによると、原料高・物価高の事業活動への影響は、「80%以上の取引先が『影響が出ている』と回答している」。具体的には設備投資に慎重になっているという声や、販売価格への転嫁に迷っているという声を聞いているとした。経営課題についての問いに対しては、「約46%が人手不足を選択」。半数に近く、具体的な声では外国人雇用や勤務シフトの見直し等を行い、人手不足の改善に努めているとの声を聞いているという。
あらゆる業界で人手・人材不足が顕著な中、酒造関係からは「当業界でもコメや黒糖の30㌔㌘を持ち運ぶ作業のため、高齢者では体力的に無理が生じ、若い世代が必要」として、将来的には「原料・資材等の減量化を考え、また若い世代が島の産業に興味を持つための施策を考える必要がある」と提案している。
福祉関係からは人手不足への対応も。▽事務職員業務連携(他事業所との業務統合)▽給食業務の委託▽見守りシステムの導入▽洗浄シャワーの導入▽業務記録のICT(情報通信技術)化―などの工夫を紹介している。
事務局は、市が行っている人手不足対策事業を各団体に説明。事業者向け支援(求人活動モデル創出事業、就業体験受け入れ企業の市ホームページ掲載、職場見学バスツアー、働きやすい環境づくり応援事業など)、求職者向け支援(就業体験支援金、人材確保・就職支援事業)が進められており、周知を図った。