テレビ番組出演が縁で〝ルーツの島〟を初訪問した大澤ホロウィッツ有論さん(左から5人目)ら=20日、徳之島町役場で
【徳之島】世界最高峰のロシアバレエ界の雄「マリインスキーバレエ団」へ入団を果たし、世界的に活躍するバレエダンサーの大澤ホロウィッツ有論(アロン)さん(24)。NHKのドキュメンタリー番組で有論さんの存在を知った親戚の問い合わせがきっかけとなって徳之島にルーツがあることが判明した。英国在住の母や弟と3人で初来島を果たし、歓迎会や町役場表敬訪問も通じて〝父祖の島〟のぬくもりに浸った。
有論さんは米国ニューヨーク生まれ、英国ロンドン育ち。米英国籍の父と東京出身で徳之島2世の母・史子(ちかこ)(51)さんの長男。史子さんの父・大澤徳城氏(故人)は徳之島町井之川出身で、明治大学相撲部主将(全国大学相撲チャンピオン)などを経て、日本相撲協会の副理事長などを務めた。同地出身で親戚の第46代横綱朝潮太郎を角界に誘導した一人としても知られる。
ルーツの島との縁を結んだのは、2020年1月に初回放送以降、繰り返し再放送されているNHK(BS1)のドキュメンタリー番組「バレエの王子になる!~〝世界最高峰〟ロシア・バレエ学校の青春」。内容は、有論さんらワガノワ・バレエ・アカデミーの美しいバレエ男子たちの卒業までの90日間を追ったもので、アメリカ国際フィルム・ビデオ祭銀賞、ニューヨーク・フェスティバル銅賞などを受賞した。
東京で番組を偶然見たという親戚(井之川出身)の問い合わせに局側が配慮し、英国在住の史子さんとの初アクセスが実現したという。有論さんの日本遠征ワークショップと、9月から英国マンチェスター大学宇宙工学部に進学する次男・亜紗(アーシャ)さん(18)の日本への語学留学(2か月間)に合わせて、史子さんの強い希望で母子3人での来島が実現した。
19日夜、井之川公民館では親戚ら住民が伝統芸能などで歓迎。20日は町役場も表敬訪問して町幹部職員らと懇談した。
都内の高校卒業と同時に米国に単身で語学留学した史子さん。帰国は数年ぶりだが〝父祖の島〟は45年ぶりだった。「私が10歳の時に父が他界し、昭和の時代背景もあって親戚とは連絡が取れない状態になったが、実際的には自分の血の半分は父方にある」と思い続けていたという。
45年ぶりの印象は「海の美しさや親戚の人たちの温かさなど記憶が鮮明に残っている。世界自然遺産にもなって、昔のままのいい島の姿が残っているのがとてもうれしい」
大叔父の第46代横綱朝潮太郎については「井之川根性の人。『神戸出身』を名乗っていたが、奄美群島の日本復帰後は『徳之島・井之川出身』を名乗ったとも聞いた」と話した。
母の強い希望で急きょ初来島となった有論さんは「自分たちのルーツがこの島にあることが分かった。来て本当に良かった。NHKのドキュメンタリー番組に出たことでつながれたことは、本当に奇跡に近い」。「世界トップクラスのロシア2大バレエ団員になれただけでラッキー。その舞台に長く立ち続けたい」と今後の抱負を語った。
次男の亜紗さんは、景勝地「ムシロ瀬」や「犬ノ門蓋(いんのじょうふた)」の岩の自然造形美がお気に入り。将来の目標は「NASA(米航空宇宙局)に勤務することです」と話した。
3人は島内の中学校を訪問して交流会も開いた。