後継樹づくりへ活動

ソテ研メンバーの分かりやすい説明を熱心に聞く参加者


健全株からナリを取り出す子どもたち(いずれも奄美市笠利町城間集落で)

集落理解得てソテツの種子採取
笠利町城間では子ども会参加
保全グループ

 奄美大島では、ソテツを加害する外来カイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)被害が拡大し収束が見通せない中、後継樹づくりに向けた活動が地元の保全グループによって進められている。集落への働き掛けで区長の理解を得ながら進めており、被害が及んでいない健全株から種子(ソテツの実のナリ)を採取し、域外保全を図る。

 活動しているのは、奄美のソテツ文化継承にも取り組んでいる保全グループ・奄美ソテツ研連(通称ソテ研)。メンバーで樹木医の稲村美由紀さんによると、救荒作物(植物)の役割も果たしたことから「奄美群島においてソテツは深く尊い歴史がある。ソテツの保全は伝統文化の保全とも言える。集落の皆さんで集落内のソテツの種子を採取するのはどうか。地域の遺伝子を持つ未来への後継樹となる」として集落などに働き掛けた。

 集落区長の理解により活動が実現したのが瀬戸内町伊須と奄美市笠利町城間で、伊須は2月16日(区長ら住民8人とソテ研メンバー)、城間は同24日(子ども会活動として)に実施。同25日には瀬戸内町西古見(区長とソテ研メンバー)でも行われた。西古見はソテツパトロールによって「美しいナリ」を見つけ、役場を通じて区長の理解を得たという。

 このうちソテ研メンバー4人も参加し、子ども会活動として進められた城間集落では同会の渋谷丹会長をはじめ大人3人と子ども8人が参加。最初に稲村さんらメンバーがソテツの特性や歴史、文化的な関わり、被害の状況と集落のソテツを守る方法として活動の意義を実物やパネルなどを使って分かりやすく説明。「被害がないか、よく観察してから採取して」と伝えると、興味深く聞いていた子どもたちからは「用でも(被害樹が)あった」「家の前にでっかいソテツがある」などの発言があった。

 説明後、集落内を巡回。午前10時から1時間半かけて活動し健全株(計7株)を見つけると、所有者の了承も得て種子を採取。子どもでも容易に採取できる高さのソテツもあり、一つ一つ丁寧に取り出していた。

 参加者からは「改めてソテツを意識するきっかけになった」「ソテツの実を初めて取った」などの感想が挙がり、子どもたちの活動を見守った渋谷会長は「集落のソテツを守るため未来につながる活動であり、これからを担う子どもたちにこそふさわしいと集落の皆さんに説明し、子ども会活動として取り組んだ」と語った。

 2月の3集落での活動を振り返り、稲村さんは「後継樹を育てるには、集落や校区など地域の皆さんと活動することが大切で、たくさんの方の協力で実現できた。ソテツの思い出話も集めており、実際に聞くことができ貴重な時間となった」と話した。