あまみワイルドライフセミナー

質問に答える鳥飼久裕氏(右)と小高信彦氏(2日、奄美川商ホール)

「中琉球」の希少生物調査報告
トゲネズミ属の生態 アマミヤマシギの渡り

 奄美大島、徳之島、沖縄島を含む「中琉球」エリアで、希少生物や野鳥の調査を行っている2人の研究者による報告会「2023年度あまみワイルドライフセミナー」(環境省奄美野生生物保護センター、奄美自然体験活動推進協議会主催)が2日、奄美市名瀬の奄美川商ホール(奄美文化センター)会議室であった。野鳥愛好家など約50人が参加。研究者の最新報告に耳を傾け、意見交換した。大島高校生物部の森林部での自動撮影カメラによる野生生物の動画なども紹介された。

 森林総合研究所九州支所(熊本市)森林動物グループの小高(こたか)信彦博士(地球環境)(52)は、沖縄島北部を中心に、ドングリの豊凶と野生生物の生息数の変化を報告。ケナガネズミやオキナワトゲネズミの生息には、外来種であるマングースの排除と、皆伐されず70年以上経過した自然の森が必要だと訴えた。

 また、同じトゲネズミ属でも奄美大島には昼行性のルリカケス、沖縄島には夜行性のオオコノハズクという天敵が存在するため、活動時間や行動に違いがあるとデータを示した。小高氏によると、トクノシマトゲネズミは、ハブ以外の天敵が少ないため警戒心が薄いという。

 奄美野鳥の会理事の鳥飼久裕氏(63)は、昨年3月に確認されたアマミヤマシギの渡りに関する調査の詳細を発表。沖縄島やんばる地域でGPSタグを装着した個体が奄美大島で確認された経緯を説明した。

 遺伝子調査の結果、奄美大島南部の個体群と沖縄島で共通した特徴が見られることから、「体重の軽いオスが、沖縄島~徳之島~奄美大島とアイランドホッピングしている可能性がある」と仮説を述べた。今後は、沖縄島に生息する個体に範囲を絞って調査を進めるという。

 質疑も行われ、鳥飼氏は「アマミヤマシギの産卵数は平均3個」、小高氏は、「トゲネズミは、ドングリの豊凶によって出産する数を増減させている」などと答えた。

 金久中2年の中山花乃音(かのん)さん(14)は「専門的な言葉があり難しかったが、(鳥飼さんの)オスだけが渡りをするという話(仮説)は特に興味深かった」と話した。

 主催した同センター(奄美群島国立公園管理事務所)の阿部愼太郎所長は「中琉球は、かつて同じ島だったと考えられている。今後の研究の進展に期待する」と述べた。