夫婦で詩集発刊

詩集『この星に平和を』


詩集を発刊した酒木玄理さん、昌子さん夫妻

平和願い、故郷への思い詠む
徳之島町出身の酒木さん
「詩にもデュエットあっていい」

 徳之島町母間出身で、茨城県取手市在住の酒木玄理(げんり)さん(82)は、妻の昌子さん(81)と2人による詩集『この星に平和を』を発刊した。ともに日本詩人クラブ会員の2人。長年、創作活動を続けており、これまでにも詩集の発行をしてきたが、2人の詩を交互に掲載する詩集の制作は初めて。玄理さんは「人生の晩年を迎え、家族への感謝と徳之島をはじめとする奄美への思いが日に日に増している。古里の友人や親類に、詩を通して平和への願いや感謝の思いが伝わればうれしい」と話した。

 玄理さんは喜界町で生まれ、父親の出身地である徳之島町母間で中学3年生まで過ごした。その後、都会への憧れなどもあり、兵庫県神戸市で高校生活を送り、大学進学とともに東京で移り住んだ。若い頃から詩を趣味として続け、昌子さんとも詩の創作活動を通して知り合ったという。

 現在、「酒木裕次郎」の筆名で活動を続ける玄理さんは、昌子さんについて「夫婦として長年、助け合いながら、一緒に詩を詠んできた掛け替えのないパートナー」と話し、「歌にデュエットがあるのだから、詩にもデュエットがあってもいい」という編集者の勧めもあり、2人の詩集を出すことを決めたという。

 今回、掲載したのは各11編ずつの計22編。「東京島人」、「母は喜ばないぜ」(以上玄理さん)、「掌(てのひら)の温もり」(昌子さん)など、家族や古里への思いと平和への願いを詠んだ作品が並ぶ。

 「南西諸島」では、産声を上げた喜界島、育った徳之島、遊びに行った祖母の大島本島、父の校長時代の沖永良部島、まだ知らぬ与論島、その先に在る沖縄―と、自宅から見えた空に浮かぶ白雲が、奄美の島々のように見えた様子を詠んだ。

 玄理さんは「台湾を含めた南西諸島を巡る周辺国の動きがニュースになるたび、奄美のことが気になってしまう。米軍統治を経験した古里が再び、戦争の犠牲にならないことを願っている」と話す。

 昌子さんは「戦争や災害によって多くの命が失われていることを思うと胸がいたくなる。一人では何もできないが、多くの人が一緒に力を合わせ、苦しんでいる人たちに寄り添うことで、世の中が少しでもいい方向に向かうことを願いたい」と、詩集に込めた思いを語った。

 『この星に平和を』はA5版、72ページで2200円(税込み)。詩集の購入、問い合わせは酒木玄理さん(0297・73・5005)へ