奄美ルーツの藤山ハンさん、新宿で個展

創作意欲を語る藤山ハンさん(左奥が立神の作品)
福永幸平さんのシマ唄演奏に聴き入る人たち(提供写真)

大小36点の意欲作並ぶ
シマ唄の熱唱も

【東京】奄美にルーツを持つ画家の藤山ハンさん(82)がこのほど、新宿区の「ギャラリー絵夢」(同区新宿3の33の10 新宿モリエールビル3階)で1月19~28日まで個展を開いた。広々としたホールには、大小36点の意欲作が並んだ。開催中にはシマ唄も披露され、多くの人が興味深く足を止めていた。

藤山さんは鹿児島生まれだが、両親は奄美の龍郷町嘉渡出身。上京後、夜学へ通いながら奮闘。21歳で絵描きになることを決意した。1988年、住宅火災に遭い、後に焼跡現場から集めた遺物類で作品を制作するなど、独学で絵に立ち向かった。2000年には、鹿児島市立美術館で「20世紀回顧・鹿児島と洋画展」を開催。01年には、フランス・パリ郊外にゴッホの墓参をし、筆で生きていく覚悟に至った。

「小さな回顧:特別出品・島村洋二郎」と題した個展。「これが最後かもと思い、初期から今日までを振り返りました」と苦笑いで説明するが、渾身(こんしん)のデッサンや油彩画を通じてエネルギッシュな空気が漂ってくるようだ。「四季を通じて何度も両親の古里を訪れました。僕の中で森羅万象に心引かれるのは、奄美に縁があるからでしょうね」と話す。63年から24年までの作品には、立神、ケンムンなど奄美をイメージさせるものが視線を釘付けにさせる。20年には、コロナ禍を憂いて「コロナ風船を捕獲する」という油彩画を発表している。     

会期中に、知人を通じて千葉県在住の福永幸平さんが「奄美の風を画廊に吹かせたい」とシマ唄を熱唱。ホールに島風を吹かせ、作品にエールを送っていた。油彩に加えて綿布、写真なども駆使して取り組む藤山さんのこだわりが、作品に重厚さを与えている。「もう先は長くない」と謙そんする画家だが、その創作意欲は決して衰えを知らない。