海兵隊員とハイタッチを交わす保育園児たち(11日、知名町大山総合グラウンド)
奄美群島で2019年から始まった日米共同訓練は、同年、駐屯地が開設された奄美大島を皮切りに、今回行われた沖永良部島ほか、徳之島、喜界島で実施されてきた。これまで奄美で「米軍」と言えば、敗戦後の「統治下時代」を指すことが世代によっては少なくない中、近年、報道上では「安全保障」に関わる存在として扱われる機会が増えていると言える。
自衛隊は日米共同訓練を実施の都度、一般公開、もしくは装備品展示などに取り組み、公開を掲げなかった沖永良部島でも訓練に支障がない限り、見学は可能。訓練の「可視化」と言える状況だった。
沖永良部島での訓練初日は10日、知名町の大山野営場などであり、少ないながらも家族連れを散見。偶然居合わせたという、伯父に自衛官を持つ男子小学生(7)は、飛来する輸送ヘリを「カッコいい」と称しつつ「住んでいる人を守るため」と自衛隊の「存在意義」を教えてくれた。
11日は、和泊町の笠石海岸で訓練を実施。観光で関東から来島したという女性(30歳代)は「21世紀に入っても戦争はあるが、日本での有事はピンとこない」と話し「戦争の報道は精神的につらいので避けている」と、「戦争への感情」を口にした。
早朝から大勢の地元住民が訪れる中、母(89)と見学したという女性(68)は「外国との問題は外交で解決すべき」とするも「米国との同盟は『今』は必要。いずれは自分の国は自分たちで守るべき」と「自主防衛の必要性」を訴えた。
家族で訪れた東京在住の男子小学生(12)は戦闘機や車両から自衛隊に興味を持ち、「ミサイルは環境を守りながら配備してほしい」と「奄美の自然と安全保障の在り方」を伝えた。
大山総合グラウンドで展示された海兵隊の重輸送ヘリCH―53に触れた地元保育園児たちは「すごい」などと声を上げて「強襲作戦用以前の乗り物への興味」を素直に示した。
奄美で常態化する日米共同訓練は、住民らから大きな反対も賛成もなく、防衛省が称する有事、平時とも異なる「グレーゾーン事態」の一端を表しているように見える。しかし、訓練の公開、見学という機会は、人々にとってそれぞれの「安全保障」を改めて考えるきっかけに成りえるように見えた。(西直人)