青少年ミュージカル「KIKUJIRO」(16日、龍郷町りゅうゆう館)
西南戦争では片足を失い、父との別れを迎えた
世界を駆けた龍郷人とたたえられる西郷隆盛と妻・愛加那の息子、菊次郎の生涯を演じた青少年ミュージカル「KIKUJIRO」(同実行委員会主催)が16日、龍郷町りゅうゆう館で初日を迎えた。同町内の小中高生34人が1年間稽古を重ねた歌やダンスを披露し、客席を埋めた約420人に感動を届けた。フィナーレは大きな歓声と拍手に包まれ、スタッフも観客も涙を流して成功を祝った。
同ミュージカルは、菊次郎の生誕160年を記念し2022年に初開催し今年で3回目。3期生は小学生15人、中学生17人、高校生2人で構成。毎週1~3回の稽古が1年を通してあり、本番に備えた。
総合演出は、劇団ニライスタジオ(鹿屋市)主宰・松永太郎さん。同スタジオメンバー2人も賛助出演し、バックダンサーの大島高校ダンス部10人を加えて総勢46人が舞台狭しと歌い、踊った。
舞台は、流刑となった隆盛と愛加那の出会い、菊次郎の誕生、台湾宜蘭(イーラン)支長時代を2部構成で描いた。
演技未経験で愛加那役に抜てきされたのは奄美高校2年の瀧愛華(まなか)さん(16)。本番を前に「自分の型に落とし込みたい」と意欲を示していたが、旅立つ息子への母の慕情を豊かに表現し、伸びやかに澄んだ歌声で新たな愛加那を創造していた。
菊次郎の少年期を演じたのは朝日中1年の姫野千葵(ちい)さん(13)。稽古の動画をチェックして演技力を高めたと言い、母への慕情と顔を知らない父への複雑な心情を演じ切った。
父の教え「敬天愛人」を貫いた菊次郎。龍南中3年の山口京桜(ゆら)さん(15)は、父との再会、離別、台湾・宜蘭支長時代までの激動を見事の描写した。
総合演出を務めた松永さんは「観客は演技の向こうにある時代背景を見ている。常に意識しろ」と稽古で言い続けたが、演技そのものは子どもたちの自主性を重んじた。
1年を通して演技指導してきた同町教育委員会の重田美咲さんは、「1・2期生が帰省時に後輩を指導するつながりができた。頼もしく感じる。やがて指導者が出てくれることを願う」と子どもたちへの思いを話した。
同ミュージカル実行委員長の碇山和宏教育長は「回を重ねるにつれバージョンアップしている。ミュージカルを通した異年齢交流が龍郷の文化となってほしい」と期待を込めた。
同ミュージカルは17日午後2時、最終公演が行われる。