保護協ヤジ分会出前講座

リュウキュウアユの生態などについて研究成果を語る米沢俊彦さん(23日、奄美市住用公民館)

「自然よく知り機運醸成を」
奄美市住用 リュウキュウアユ生態学ぶ

 奄美市・宇検村・龍郷町で運営する奄美自然保護協議会ヤジ分会は23日、同市の住用公民館で市民向けの「リュウキュウアユ出前講座」をした。講師は、奄美リュウキュウアユ保全研究会(会長・四宮明彦元鹿児島大学教授)のメンバーで、個体数や生態の調査を行っている県環境技術協会の米沢俊彦さん(53)。「リュウキュウアユと奄美の川の生きもの」と題し、海と川を行き来しながら一年で一生を終えるアユの生態などを説いた。

 講座は、同協議会ヤジ分会が取り組む保護増殖事業の一環。約20人が参加した。生態などを市民に広く知ってもらうことで、自然保護の啓発を図る目的。

 奄美大島が位置する中琉球は、一千万年前に大陸や日本列島と陸続きにあり、100万年前に現在とほぼ同じ状態となったといわれている。トカラ列島の悪石島と小宝島の間を通る「渡瀬線(わたせせん)」は、生物の分布境界線といわれ、奄美群島に多くの固有種が生まれた。

 米沢さんは、▽ヤジの語源は、『南島雑話』にある「八仔」(卵をたくさん産むの意)▽ほかのアユ属との遺伝的距離が遠く100万年単位で進化した▽エサは珪藻(けいそう)やラン藻を主とした付着藻類―などと説明。

 春(2~5月)は海から川へ上る遡上(そじょう)期、夏から秋(5~11月)は川の中流部に定着、冬(11~1月)に成熟・産卵期を迎えオレンジ色の婚姻色を帯びる―と、「年魚」と呼ばれる同種の1年の生活史を示した。

 産卵に至るには、昼夜の時間のバランスと水温が20度以下になることが絶対条件で、夕方から日没にかけ一斉に産卵するという。

 奄美で「古瀬」と呼ばれる2年目を迎える「越年(おつねん)」については、「約2割が越年すると考えているが、奄美大島に300羽いるとされるカワウの増加が個体数の減少要因の一つになっている」と懸念を示した。

 東京から帰省中に参加した住用町出身の和田理征(りせい)さん(51)は、「40年前は、父が投網で獲って家族で食べていた。1回で30~40匹獲れたと記憶している。昔の姿を取り戻したい思いはあるが、災害の問題もあるので自然保護一辺倒とはいかない。人と自然が共生できる環境を取り戻せれば」と複雑な思いを口にした。

 米沢さんは、「保護条例だけでは守れない。住民が自然を良く知り、機運を醸成する必要がある」と今後の保護の有りようを語った。