奄美遊び旅満喫

奄美旅の最後は50匹のウサギと戯れ、幼い頃からの友達のような雰囲気に。こたやん(右)の思いは子どもたちに届いた(29日、龍郷町「民宿たけの」)

関西などから9人 プログラムは子どもが決める
K+キッズ商会

 子どもたちを自分の責任で自由に遊ばせる「プレーワーカー」という職業がある。そのプレーワーカ―が手掛けた奄美大島冒険ツアー「ぜんぶ 遊び!6日間 奄美大島長期キャンプ2024」が瀬戸内町や龍郷町であった。2009年から奄美大島や沖縄などで毎年夏休みに行われてきた恒例企画。コロナ禍の影響で19年を最後に中断され、3年ぶりとなった今年は初めて春休み中の開催となった。

 手掛けたのは任意団体「K+キッズ商会」(京都府城陽市)代表の「こたやん」こと小谷尚江(ひさえ)さん。京都、滋賀、東京から5泊6日(25~30日)の日程で小学4年生から中学3年生までの9人が〝未知の島〟を訪れた。

 奄美空港に降り立った子どもたちの第一声は「暑~い」。大阪伊丹空港の出発時点の気温は7度、奄美大島はこの日最高気温27・8度を記録している。滋賀県大津市から参加した桂川小4年の鈴木里穂さん(10)は「用意していたトレーナーを置いてきてよかった」と振り返った。

 一行は、瀬戸内町蘇刈(そかる)のヤドリ浜キャンプ場で4泊。このツアーにプログラムはなく、「子どもがやりたいこと、思いついたことを実現させる」のがプレーワーカー・こたやんの役割。

 「海に飛び込みたい」という声に応え27日は、海上タクシーで加計呂麻島スリ浜へ。海水浴や釣りの要望と併せて実現させた。

 28日は、「ドッジボールをしたい」との要望に、古仁屋小・学童保育の約20人と真剣対決。「朝練して挑んだが、2~5歳年下に完膚なきまでにたたきのめされた」と京都府城陽中1年・星川弘樹(こうた)さん(13)。初めて釣った約20㌢の大物をキャンプで焼いて食べ、留飲を下げたという。

 その日の夜はキャンプに嘉鉄小子ども会10人を招待してのバーベキュー。たこ焼きをせんべいで挟んだ大阪名物「たこせん」を振る舞った。シマ唄大会の常連、古仁屋高校の白戸姫夏さんらが本場のシマ唄で歓迎した。

 異文化交流を重ねた子どもたちは29日、空港に近い龍郷町の「民宿たけの」へ移動。ホーランド・ロップやパンダウサギなど約50匹のウサギが放し飼いにされた庭で、時間を忘れて追い掛け続け、抱き上げて満面の笑顔を浮かべていた。

 滋賀県大津市の志賀中学校に進学する鈴木幸穂さん(12)は「楽しく驚きの詰まった旅だった。普段の生活には時間割があったが、自分のことは自分で考えなければならない、こたやんの言う〝自由〟が伝わってきた。交流することで奄美の文化も知れた。また戻ってくる」と話した。

 こたやんは「子どもたちが野外活動を通して自分の声を伝えられる経験をしてほしい。予期せぬことに対応できる術(すべ)を知り、自分の足で立ってほしい」と思いを語った。

 自然と文化に触れた都会の子どもたちは、新たな自分を知り30日、奄美の地を飛び立った。