4割超がクローン?ヒメタツナミソウ

4割超がクローン?ヒメタツナミソウ

開花が始まったヒメタツナミソウ(喜界町教育委員会提供写真、今年3月撮影)

喜界島に自生 山本助教らが遺伝子解析
保全へ「多様性肝要」

 喜界島に自生する固有種・ヒメタツナミソウについてクローン個体数の分布など、一部実態が明らかになってきた。兵庫教育大学大学院学校教育研究科の山本将也助教らが報告した。島内で140個体を採取し遺伝子解析を行った結果、うちクローンは4割超を占める59個体だった。実態を把握することで、効率のよい保全活動につながるという。

 ヒメタツナミソウはシソ科の多年草で、環境省レッドデータブックの絶滅危惧ⅠB類などに指定されている。クローンは、茎が切れて独立したり、自家受粉などで複製された個体で、同一の病気や災害で全滅するといった問題がある。また、クローンが存在することで、地上で確認できる個体数の実態は乖離(かいり)しているとみられ、保全上でも大きな課題になっている。

 遺伝子解析では、パッチ(群体)ごとに個体を採取し識別。結果はクローン成長に由来する株が予想を上回る42%を占めていた。大半のパッチは単一クローンも、中には8か所に拡散したクローンや40㍍にわたって広がるクローンも一部でみられ、一方では、民家や露頭でみられる小さなパッチでは、クローン個体数が高いという傾向もみられた。

 このほか、近縁種で琉球列島に咲くアカボシタツナミソウを比較する調査も行われ、奄美大島より石垣島などの沖縄系統に近いことが分かった。遺伝的多様性は同種より低かったものの、多様性低下の一因である閉鎖花による自殖の影響などはみられなかった。

 保全に向けては「単位内で増えたクローンを移植したり、種子をまくことで小さなパッチの消失を防ぎつつ、クローン数と遺伝的多様性を維持・回復させていくことが肝要だ」と指摘。研究に携わった同町埋蔵文化財センターの松原信之主査は「工事の影響などで個体数は減ってきている。みんなに知ってもらうことで、地域の宝を守ることにつながれば」と話した。

 3月29日には、喜界町役場で山本助教らによる研究報告会が開かれた。報告書は今年5月に発表される。