日本ソテツ研 沖縄でもフィールドワーク

沖縄島でのフィールドワークにより明らかになったおくまビーチ近辺のCAS被害状況(日本ソテツ研究会提供)

「確実にCAS被害進出」
域外保全へ種子など採取

一般社団法人日本ソテツ研究会(髙梨裕行会長)は昨年12月の奄美大島に続き、日本ソテツの域外保全のための第2回フィールドワークを沖縄島で行った。ソテツへの外来カイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)被害について「現時点では必ずしも危機的ではない」と報告する一方、奄美大島ほどの被害はなかったものの「確実にCASの進出は進んでいる印象」としている。

報告によると、実施したのは3月19~21日。遺伝的多様性を残すための域外保全を前提とした種子(ソテツの実のナリ)及び子株の採取と、関連する調査・情報収集を目的にした。

沖縄島北部の大石林山(国頭村にある観光施設)、中東部のうるま市海岸部を中心に複数の生息地に自生しているソテツから採取。いずれも行政や地権者などの関係各所からの必要な許可を受けたという。対象とした雌株10、雄株1からの採取数は、種子が125、子株が123。採取地点における位置情報などの整理を踏まえて、種子・子株の域外保全を展開。国内外の複数の植物園あるいは研究施設に栽培保全を委託する予定で、各採取場所のソテツがCASによって失われた場合には、同じ生息地に採取個体を植え戻す選択肢を残すことで、遺伝的多様性を守ることができる。

採取と同時に、大石林山、一般社団法人沖縄美ら島財団、那覇市役所の関係者と情報交換も実施。報告では沖縄島でのCAS被害状況について「おくまビーチ裏の自生地や、一部人為的な植栽地域では完全に枯れ込みが進んでしまっているなど予断を許さない状況にある」と指摘する。

沖縄のソテツは「他の草木との競争により、土壌が貧しくとも日照条件を確保できる海岸部・岸壁部の石灰岩質の場所が本来の自生地」と考察。特に南部では第二次世界大戦時の影響も大きく、人為的なものなのか自生なのかの判別がつきにくいという。同研究会は今後、中東部及び南部の個体についても同様の作業を進め、本来の遺伝的多様性を確保していく方針だ。