環境省は8日、奄美大島と徳之島で収集されたアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミについて2023年(1~12月)の死体確認件数と解明された死因内訳をまとめ公表した。交通事故件数の増加、イヌやネコによる捕殺事例の確認を挙げており、「夜間運転の注意」「ペットの適正飼養」を求めている。
沖縄奄美自然環境事務所奄美群島国立公園管理事務所によると、同省では希少な野生動物の生息に影響を及ぼす要因の把握や保護対策への活用のため、野生動物の死体や傷病救護の情報を収集し、データの整理・分析を行っている。23年の1年間の場合、死体確認数はアマミノクロウサギ272件(奄美大島215件と徳之島57件の合計)、ケナガネズミ169件(奄美大島144件、徳之島25件)となり、いずれも過去最多という。
死因解明の主な内容は次の通り。
【交通事故】死体確認件数は、奄美大島ではアマミノクロウサギ147件(死体145件、救護のち死亡2件)、ケナガネズミ67件(死体64件、救護のち死亡3件)、アマミトゲネズミ16件(全て死体)、徳之島ではアマミノクロウサギ28件(同)、ケナガネズミ8件(同)、トクノシマトゲネズミ2件(同)を確認。奄美大島ではいずれも過去最多となった。
交通事故が多発している道路は、奄美大島では瀬戸内町道網野子峠線、国道58号線役勝から網野子トンネルまでの区間、県道79号線(大金久~今里間)、県道612号線(役勝~篠川間)、湯湾岳周辺の林道、奄美市朝戸和瀬線・和瀬城線、徳之島は県道629号線(手々~金見間)など。多発地点には警戒標識などが設置されていることから、「標識のある場所付近では特に、夜間の運転における野生動物の急な飛び出しなどに注意をお願いしたい」。
【イヌネコ】奄美大島ではアマミノクロウサギ23件、ケナガネズミ9件、アマミトゲネズミ3件が、徳之島ではアマミノクロウサギ8件、ケナガネズミ4件、トクノシマトゲネズミ5件がイヌやネコによる捕殺死体として確認された。
現在、奄美大島と徳之島では、森林域に生息するノネコの捕獲事業を実施。捕獲されたノネコのふんからは多くの希少種が検出されている。自動撮影カメラによるモニタリングでも希少種をくわえたノネコが多数確認されている。イヌやネコの飼養について、▽狂犬病予防法や各市町村の飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例に基づいて、居住する市町村役場で登録▽迷子防止のためマイクロチップを装着して所有者明示の上、不妊・去勢手術▽希少種保護や民家へのふん尿害・感染症の防止のため室内飼育を徹底し放し飼いや遺棄をしない▽ノラネコやノライヌにみだりに餌を与えない―を呼び掛けている。