「ガザ・素顔の日常」天城町で上映会

「ガザ・素顔の日常」上映会を通して平和を考えた=14日、天城町防災センター
視聴後、「希望の樹」に平和の願いを託す住民たち

「希望の樹」に平和の願い メモを託す

【徳之島】平和を考えるドキュメンタリー映画「ガザ・素顔の日常」の上映会(天城町ユイの館主催)が14日、天城町防災センターであった。イスラエル軍の昨年10月7日以降の無差別的報復攻撃で約3万2千人(うち子ども約1万2千人)が死亡し、悲劇が続くガザ地区。観客らは、知られざる日常生活の残像と過酷な現実を対比させ、平和を願うメモを「希望の樹」に託した。

奄美群島の日本復帰70周年を経て、今一度平和について考えるきっかけの創出にと同館の今年度事業の一つ。企画・ナビゲーターは「森と海の藝術楽校」主宰ののせたかこさん(47)=同町当部。「ガザ地区の人々もただ普通に暮らしたい、ただ生きたいのです。そう願うのは私たちと同じ普通の住民たちです」。幅広い世代の観客たちに「観覧後、どうしたら戦争は終わるかご意見を。大きな樹を作り上げたい」と協力を求めた。

「ガザ・素顔の日常」は2019年、アイルランド、カナダ、ドイツの合作(92分)。歴史的に戦火のイメージが強いガザ地区だが、地中海に面し気候は温暖で花やイチゴの名産地。美しいビーチには老若男女が訪れ、若者らはサーフィンに興じる。その一方で、東京23区の約6割の広さに約200万人のパレスチナ人が暮らし、その多くが貧困にあえいでいる。イスラエルは同地区を壁で囲むだけではなく、07年以降は物資や人の移動も制限。ガザ地区は「天井のない監獄」とも呼ばれる。

そうした中、現実逃避にチェロを演奏する19歳の女性は、国際法や政治学を学ぶため海外留学を模索。14歳の少年の夢は、大きな漁船の船長になって兄弟たちと一緒に漁をすること。平和と普通の生活を夢見ながら、日常を強く生きようとする人々の現実の姿などを捉えている。

上映後、希望の樹(2・7㍍×1・8㍍)には、「みんな違っていい。国境をだれが決めたのであろうか。同じ命をもつガザの人たちは、ただ生きたいと思う。夢と希望を持ちたいと思う。私にできることは違いを認めること、祈ること、寄付をすること」「貧困や宗教の違い、資源の奪い合いで争いが起きている中、子どの教育が大事。もっと外の世界に目を向けてほしい。異なる意見に対しても暴力ではなく、話し合いで解決することを学び、相手を思いやる気持ち、大切な命についてもう一度考えてほしい」など多くの意見が寄せられた。

同町役場玄関ロビーやユイの館、町防災センターなどで巡回展示を予定。のせさんは「ご意見を共有することで、同映画会など戦争をなくす行動、平和の循環につながれば」と期待を寄せた。