田中一村展に向けて記者発表

左から東京都美術館=高橋明也館長、千葉市美術館=松尾智子副館長、田中一村記念美術館=宮崎緑館長、東京都美術館=中原淳行学芸担当課長

初の東京での個展9月に開催へ
奄美で描かれた作品中心に250点超

【東京】奄美でその生涯を終えた孤高の画家として知られる田中一村の初の東京での個展が、今年の9月に開催される。その記者発表が24日、会場となる東京都美術館で開かれた。奄美からは田中一村記念美術館の宮崎緑館長も駆け付け、一村をとりこにした奄美の魅力を広く紹介。記者発表会には67媒体・82人が詰めかけ、期待の高さがうかがえた。

神童と称された幼年期から、最晩年に奄美で描かれた絵画作品を中心にスケッチ、工芸品、資料など250点を超える大規模回顧展になる。9月19日(木曜)~12月1日(日曜)まで。

一村の名前が広く全国に知れ渡ったのは1984(昭和59)年、NHKの日曜美術館で放映されたのがきっかけ。また、そのきっかけとなったのは、3日間で3000人が会場に押し寄せた、有志による「田中一村画伯遺作展」だったことなど、一村にまつわる話を交えながら、同館長、学芸担当課長らから紹介があった。

初期から晩年まで、時系列に展示し、一村の人となりを紹介していく展示を予定している。

2010年に「田中一村 新たなる全貌」展(千葉市美術館ほか)が開催され、作品の再調査や資料の見直し、検証資料が図録に残った。今回は当時携わった松尾智子・千葉市美術館副館長が監修した。

一村が出した手紙などから足跡をたどり、空白期と言われていた時代の作品などが多数発見され、今回初めて展示される。松尾さんは「人とのつながりが絵を生んでいることが分かる展示になればいい。長く研さんを積んだ下積みが、題材の上に花開いた悔いのない制作をやり遂げた作品を、ここで見てほしい。一村にとっての奄美の意味を感じることができる。一村に影響を与えた奄美を誇りにしてほしい」と話した。

宮崎館長も「一村は奄美に出会って、一村になったと島っちゅは思っている」と奄美独自の文化についても話し、出席した記者らは熱心に聞き入っていた。