希少種持ち出し防止へ啓発

来島者へチラシを配布する環境省職員

環境省 奄美空港でチラシ配布
合同パトで監視強化も

 環境省は29日、奄美大島の希少な動植物の持ち出しを防ごうと「希少種盗掘・盗採防止キャンペーン」を開始した。来島者の増加が見込まれる同日は、奄美市笠利町の奄美空港で啓発チラシを配布し、島を訪れた観光客らへ注意を呼び掛けた。5日までの大型連休中は合同パトロールを実施し、監視体制も強化していく。

 奄美大島では亜熱帯性気候のため、特有の野生動植物が分布している。一部は種の保存法や自治体の条例などで捕獲や採取が禁止されているが、規制対象にない希少種は多く、収集家や販売目的などで来島する人の島外への持ち出しが課題となっている。

 同省によると、昨年の7月中旬には数種類のクワガタや昆虫約700匹を持ち出す事案も発生した。貨物からの通報で発覚したものの、規制外の種は取り締まるすべはなく、コロナ禍の行動制限解除以降は、こうしたケースも増えているという。

 この日は、同省奄美群島国立公園管理事務所の職員3人が、ロビー到着口で保護区や禁止リストの載った啓発チラシを来島者らに手渡した。「捕獲や採取に気を付けて」と声を掛け、希少種の保全や保護に協力を求めた。

 同事務所の釣谷洋輔離島希少種保全専門官は「今の制度では限界もある。持ち出し禁止を視野にした新たな制度も考えなければならない」と危機感を示し、来島者へは「持ち出しは島の生態系に影響を及ぼす恐れもある。ルールやマナーを守り、島の中で楽しんでほしい」と呼び掛けた。

 合同パトロールは、林野庁九州森林管理局名瀬森林事務所、県大島支庁、島内5市町村で構成する奄美大島自然保護協議会らが協力し、29日~5月5日に実施。島内各地を巡回し、違法行為防止などに努めていく。