ドローンを活用して上空から薬剤を散布しての病害虫防除技術確立へ新たな試みとしてタンカンを対象に進められる(叶農園での散水デモンストレーション)
奄美群島ではサトウキビやバレイショなどで活用されているドローンによる病害虫防除をタンカンでも検討していこうと、県園芸振興協議会大島支部(事務局・大島支庁農政普及課)は30日、現地実演会と室内検討会を開いた。上空からのドローンでの登録薬剤散布の場合、手散布に比べ葉裏への薬液の付着程度は低い(かけむら、かからない)ものの、作業の大幅な省力化が可能なことから新たな試みとして普及に向けたプロジェクトを推進し、技術実証活動などを展開していく。
生産者代表として普及指導協力委員、若手農家で構成する奄美柑橘(かんきつ)クラブの会員、作業請負企業(㈱じむき)、市町村やJA、県の関係機関担当者ら約40人が参加。現地実演会は名瀬本茶地区内にある叶農園で、室内検討会は県農業開発総合センター大島支場会議室であった。
実演では、作業請負企業がドローンを飛行させて散水デモンストレーション。終了後に参加者から質問があり、▽タンカンが植栽された樹間の上1・5~2㍍を飛行し散水したが、10㌃あたり5分程度でかけることができる▽サトウキビ畑などでは自動で操作されているが、果樹園は傾斜地にあるため樹高が一定せず、また周囲には防風林もあるため手動で対応▽風速3㍍までなら薬剤の散布が可能▽受託料は10㌃あたり2500~3000円(薬剤費は含まず)―などが説明された。実際に利用している農家からは「木の密植状況によって下の方は薬液が付着しない。手散布に比べ100%できない」との報告があった。
計画検討会ではプロジェクト実施の背景、狙いなどが事務局から説明された。それによると、奄美大島のかんきつ防除では薬剤散布作業が困難な生産者(意識・装備・労力不足)が多く、複合農家・大規模農家でも適期防除を逸する場合があるという。価格が手頃な作業請負企業が存在するなど受託環境が整いつつあり、また島内のかんきつ園地のほとんどがドローン飛行可能区域にあることからプロジェクトを推進ことになった。取り組みにより期待される効果として商品性アップ、流通量の増大、共販量増による選果場運営の安定的効果及び良品増での有利販売効果などが挙がった。
地域への技術波及の起点として奄美柑橘クラブを対象にした実証活動展開が了承された。園振協大島支部の事業として進められるもので、実証は1か所(現地実演会が行われた叶農園)で行われが、今後増える可能性もあるという。協力農家(叶幸治さん)と関係者で防除計画を作成していくが、実証によりドローンを使った病害虫防除技術を確立していく。