奄美の果物も「日本一」に貢献

フレスポジャングルパーク内にある洋菓子店「スイートスイーツ」

本多エリカさん

「鹿児島にジェラートを広めたい」
スイートスイーツ・本多さん

【鹿児島】鹿児島市与次郎のフレスポジャングルパーク内にある洋菓子店「スイートスイーツ」。シェフパティシエ・本多エリカさん(49)は、2年前に東京であった第5回ジェラートマエストロコンテストで、審査員賞と一般投票最優秀賞を受賞した。西日本からの参加者で初めて「日本一のジェラートマエストロ」の称号を手にした。

受賞作品は「知覧紅茶のフルーツティー」。奄美産のマンゴー、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツをベースにしたソルベ(乳製品を使わず果汁だけで作ったシャーベット)に、知覧紅茶で独特の風味を出し、「鹿児島の夕暮れ」をイメージした色彩で構成した。受賞から2年、「鹿児島の食材の良さを広めたい」という思いをベースに、「地産地消」「SDGs」の理念にかなう商品づくりに情熱を傾けている。

元看護師だったが、結婚・出産を機に退職。子育てが一息ついた頃、親戚の洋菓子店の手伝いをしたことがきっかけで、菓子作りの面白さに目覚めた。ケーキ、パフェなどさまざまな洋菓子作りを8年ほど修行し、34歳で起業した。

ジェラートに本格的に取り組むようになったのは「夏場の売り上げアップ」につながるもの探しがきっかけだった。イタリア語で氷菓を意味するジェラートは、果物や野菜を原料に特殊な機械を使って、市販のアイスクリームのように乳製品や多量の空気を含まなくても「滑らかな口当たりで、爽やかに溶けていく」感覚がある。何より「鹿児島の素材の良さを十分に生かせる」ことに魅力を感じた。鹿児島は「白熊」に代表される「かき氷」の人気が高いが「鹿児島産ジェラートをぜひ広めたい」という夢が芽生えた。

2年前のコンテストは3回目の挑戦だった。2年に1回の開催がコロナ禍で1年延期となった大会で「コロナ禍で食べたい癒やし」がテーマだった。

「癒やし」でまず思い浮かんだのが、古里の垂水牛根で過ごした幼少期に、毎日のように眺めていた桜島越しの夕暮れの風景だった。夕景のオレンジや黄色は奄美の果実や屋久島のタンカンで再現できたが、味の決め手が見つからず、数百食の試行錯誤を繰り返した。

「和光茶を入れてみたらどう?」。一つ上の夫・司さんの何気ないアドバイスで取り入れたのが知覧産の紅茶。口に入れた時にフルーツの味がしっかりして、最後に鼻に抜けるときに紅茶の香りがする。両者のバランスが絶妙な逸品ができた。

コンテストは審査員による試食とビジュアルにPR動画や3分間スピーチの総合で審査される。本多さんは鹿児島産の食材の良さや、傷がついていても味は変わらないB級品を利用することでSDGsを実践していることなどをアピール。審査員賞を受賞しただけでなく、コンテストに先駆けて開催されたアイスクリーム博の来場者による一般投票でも最多得票を獲得して最優秀賞に選ばれた。「東日本の出場が大半で、完全アウェーの中で優勝できたのがうれしかったです」

今年3月にあった第14回県新作観光土産品コンクールでは8種類のクッキーを詰め合わせた「鹿児島缶光」で優秀賞を受賞した。出水、霧島、桜島、指宿…各地の特産品を生かしたクッキーに仕上げた。喜界島のゴマ、奄美大島のドラゴンフルーツ、徳之島の黒糖も使用されており、1缶で県内を北から南まで旅したような気分になれる遊び心が評価された。

競争の激しい洋菓子の世界。味の良さだけで生き残るのは難しい中で本多さんはジェラートを中心に「大好きな鹿児島の素材の良さを全国に発信する」という理念をバックボーンに、日々研さんに励んでいる。
     (政純一郎)