「黒穂病」沖永良部・徳之島で確認

約半世紀ぶり徳之島でも公式確認されたサトウキビ重要病害「黒穂病」の罹病株(天城町農政課提供)=15日、同町浅間地区

半世紀ぶりか 緊急放送や合同抜き取り作業
サトウキビ重要病害

 【徳之島】サトウキビの重要病害「黒穂病(くろほびょう)」の発生が沖永良部島、徳之島両地区で今週に入り相次ぎ確認された。奄美群島最大のキビ主産地・徳之島では半世紀ぶりとみられ、同島さとうきび生産対策本部は3町への緊急放送で発見・防除対策を喚起。沖永良部さとうきび生産対策本部の関係機関・団体は、知名町内を中心に罹(り)病株の検索・抜き取り防除の合同作業に入った。

 黒穂病は、世界中のサトウキビ生産地域で発生が確認されている重要病害。罹病すると生育に異常が生じ、製糖原料としての品質が低下する。罹病株は鞭状物(べんじょうぶつ)の発生で病原菌の胞子が拡散、周囲の株に被害が拡大するため、早期に罹病株を掘り起こし焼却処分する必要がある。有効な薬剤はなく、抵抗性品種の利用が主要な防除手段(農研機構)などとしている。

 同群島では、黒穂病に強いキビ品種「農林8号(NiF8)」などの開発普及も奏功してか近年は発生情報(公式)がなかったが、昨年6月になって喜界島で久々に確認。県病害虫防除所は発生株の作型「株出し」「夏植え」や、防除に関する技術情報を発出して対策を呼び掛けていた。

 徳之島きび生産対策本部などによると、同島では天城町浅間地区のキビほ場で14日、通行人が罹病株状に穂先が黒く伸び下葉が黄色く色あせた株を偶然見つけて通報。15日、県や3町農政、南西糖業など関係者が合同調査して現認。生産対策本部は同日中に、3町の防災行政無線を通じ「黒穂病の発生を確認。キビの先端から黒い穂が出て芯が枯れる。放置すると被害が拡大する可能性が。徹底した畑の見回りと発見時の連絡を」(要旨)などと呼び掛けた。

 一方、沖永良部きび生産対策本部などによると、知名町内で12日までに確認。13日に緊急対策会議を開くとともに、15日から田皆地区を中心に関係機関・団体による合同作業を開始した。

 徳之島地区に関しては1974(昭和49)年7月に「黒穂病を発見」、翌75年5月「黒穂病全島蔓(まん)延のため抜き取り焼却作業」、同年8月「同抜き取りに助成」―などの記録も。

 黒穂病の発生生態及び被害に関し、県病害虫防除所は、①罹病茎は健全茎よりも茎が細く、節間が長くなる。先端部は長い鞭状物(いわゆる黒穂)となる②病原菌は糸状菌の一種であり、胞子が風や雨水で分散し、地上芽や地下芽に感染する③株出し回数が多くなるほど発病株率は高くなる④罹病株から採苗すると植え付け後に発病し、新植ほ場へ広がる―など挙げ、注意を喚起している。