パソコン教室先生からグミ製作者に

シーグラスグミ。2種類の味を三層に重ねたキューブグミの味は三種類、パッションミント、黒糖ミルク、マンゴーレモン。1箱680円(税込み)
 

 
表彰状と商品を手に、昭江さん(右)と聡美さん

 

 

 

あまみ島一番コンで最優秀賞に輝いた「シーグラスグミ」
㈲パリティビット・三宅さん

 

 奄美群島観光物産協会の2023年度あまみ島一番コンテストがこの3月に奄美市名瀬の川商ホールで開催された。応募があった食品部門34点の中から、浜辺で見つかるシーグラスの形を模し、島のパッションフルーツや黒糖など4種類の味を詰め込んだパリティビット(ぜいたくグミ工房953)の「シーグラスグミ」が見事最優秀賞に輝いた。㈲パリティビットの代表取締役・三宅昭江さんを取材し、商品が完成するまでの道のりを聞いた。

 新型コロナウイルス感染症はいろいろな人の人生を変えた。奄美市名瀬の三宅さん(61)も人生を大きく変えたひとり。パソコン教室をやめ、グミを作る人になった。

 三宅さんはこれまでは職業訓練でのパソコン指導とパソコン教室を大黒柱でやっていたが、この大黒柱を取っ払って、枝葉のITは残し、大黒柱をグミ製作へと大きくかじを切った。

 グミ作りにスイッチしたきっかけは、コロナ禍となりパソコンスクール運営も厳しくなり、方向展開を考えてのこと。2022年3月でスクールを閉じ、4月から早速グミ製作者への道に乗り出した。ノウハウゼロ、資金ゼロからのスタートだった。共同経営者の妹の聡美さん(56)と共に大好きなグミ作りをスタートした。

 まず市役所を訪ね、「パッションフルーツやスモモ、タンカンなどの特産品を使ってお菓子を作りたい。サポートする情報をもらえるところはないか」と相談、受け付けで紬観光課を紹介された。市では、商品開発のデザインや販路開拓などの支援金を出していたがそれは商品があっての話だった。次に紹介された奄美群島広域事務組合では「島ちゅチャレンジ応援事業」で、民間企業等のチャレンジを支援していた。審査が通ったら全体の金額の8割補助がある。上限200万円、軍資金として先にもらえるのも大きな魅力だった。国の事業再構築補助金など高額な補助もいろいろあったが、全部後払い。補助の金額が高くなれば、提出資料が増え、ライバルも多い。群島からしか出てこない、この島チャレはチャンスだった。

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 三宅さんの心が決まった。グミ開発にかかりそうな経費を見積もり、資料をそろえて、チャレンジ案をプレゼンテーションした。
 ノウハウは、なんでも無料で相談に乗ってくれる「よろず支援拠点」に相談。そこにはSNSの専門家、ホームページ作成の専門家、補助金取得アドバイザーからデザインと各種の専門家がいた。それでも、分からないことは山のようにあった。品質表示の書き方、カロリー計算、賞味期限など。これも、食品開発の専門家、検査の仕方、商標登録の仕方を教えてくれるところを紹介してもらうなど無料相談をフル活用した。

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 グミの発売スタートは昨年4月。開発にとりかかってちょうど1年だった。グミの製作もネットで調べ、レシピ相談を見つけた。配合量レシピを作って送ってくれるというもの。「これはいい」、グミ作りに光が差した。素材を送り、商品にして戻してくれた。メーカーとのやりとりは2回ほど。黒糖の味とパッションの味の2種類。酸が入るとゼラチンの固まりが悪い、酸が入っているものといないもの2種類を作ってもらった。「すっぱすぎる、甘すぎる」。味を微調整して商品にするのに半年かかった。

 味はこれまでのグミとは一線を画したものに仕上がった。

 初めての納品は奄美空港の2階の売店だった。父の昭三さん(95)がかつて、手作りのナリの実のキーホルダーや、高倉のミニチュアのお土産を卸していた。その縁で「グミをつくっています。置いてください」と営業した。箱のデザインも目を引く商品に、1階の売店からもオファーが来た。口コミで、販路が広がっていった。

 食べた人からは、「優しく新鮮な味」と評判を呼んでいる。パッション、マンゴー、黒糖は島の物を使用。完成までに2日、1日にできるのは2人がかりで50箱ほど。カットの難しさもあり無駄が出てしまうという。鉄工所に専門の刃物が作れないか相談したり、一個ずつ包んでいるキューブタイプの仕上げを変えようと思案中。

「手作りが過ぎて量ができない」高級路線に乗せたい思いと、量産できない課題が残る。

 “半IT半グミ”で聡美さんと二人三脚、グミ制作に忙しい毎日を送っている。

 

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 「短期の目標=生産性を上げて、販路を増やしたい。中期目標=味や形、いろんなグミを作りたい。長期目標=レストラン、ケーキショップなど他の分野の人たちと、グミでコラボしていきたい」と大好きなグミに没頭中だ。

 「資金なし、ノウハウなしでもいろんなところに頼れば何かできる。やりたいことにチャレンジできるいい時代になった。今何かしたいと思っている人に、実現できるツールがたくさんあることを伝えたい」。起業したい人に三宅さんはエールを贈る。

 5月末まで、ビッグツーの「島一番コンテスト」特設コーナーでも展示販売されている。

 https://www.935.co.jp/
                            (屋宮秀美)