塩田康一氏、米丸麻希子氏、樋之口里花氏(右から)
任期満了に伴う県知事選挙は、6月20日の告示まで1か月となった。これまでに立候補を表明しているのは、現職で2期目を目指す塩田康一氏(58)、元自民党県議で新人の米丸麻希子氏(49)、市民団体共同代表で新人の樋之口里花氏(52)=いずれも無所属、表明順=の3人。現職に新人2氏が挑む構図で、現職は支持固め、新人は知名度アップに懸命だ。
4年前の選挙で7人が乱立した選挙を制した元経済産業省官僚の塩田氏は、昨年の県議会12月定例会で自民党の代表質問に答える形で立候補を表明。「古里鹿児島に対する熱い思いは誰にも負けないと自負している。再び県民の皆さんの支持、支援を頂けるのであれば引き続き県政を担当させていただきたい」と述べた。
県議会最大会派の自民が推薦を決定。他の政党では国民民主から推薦を得ている。県商工会連合会やJA系の県農民政治連盟、首長で構成する県町村会の推薦も獲得。現職として公務をこなしながら着々と支持を固めている。
塩田氏は、大型連休中には奄美群島にも足を運んだ。今月2日には奄美市名瀬で後援会事務所を開設。伊仙町の幼稚園や小学校に通ったなど奄美との縁を紹介した上で「私が小さい頃いた当時と比べるとかなり生活が良くなっているが、依然として地理的な条件不利性などまだ産業基盤を整備していく必要がある。(改正された)奄振法の中にある農業振興、教育文化といった取り組みも必要。引き続き皆さんと共に県政を担い、奄美の発展のために力を尽くしたい」との決意を示すとともに、一票一票積み重ねるため支援の輪の広がりを出席者にお願いした。
米丸氏は4月に入り正式に立候補を表明。姶良市出身で、2019年の県議選で初当選し、2期目の途中だった3月に議員辞職し、自民党も離党した。知事選立候補の最大の理由は、県が鹿児島市のドルフィンポート(DP)跡地に新県体育館建設を決め、約313億円の予算が3月議会で可決されたことに「ストップをかけるため」。DP跡への建設を「鹿児島が国際観光都市に発展する可能性を台無しにする」と批判している。
県立高校での観光学科の設置、子ども医療費や給食費の無償化などの子育て支援、産業振興などを公約に掲げる。
「あいさつ回り」として4月下旬には奄美大島で活動。世界遺産に登録された自然や固有の文化、伝統工芸の大島紬や地場産業など奄美の魅力について「ブランディングやマーケティングを県政で進め、世界にPRしていきたい」と述べ、ブランド・コンサルティング企業に勤務した経験から、県政での発信の在り方に民間の発想を求める。農業などの1次産業、観光産業、さらに6次産業などを軌道に乗せるためビジネス的発想の大切さも主張する。
樋之口氏は告示まで1か月近くに迫った今月16日、鹿児島市の県庁にある県政記者クラブで会見し、知事選への立候補を表明した。霧島市出身の元看護師。国政選挙で野党共闘を呼び掛ける「市民・野党共闘をすすめるALLかごしまの会」共同代表や、新日本婦人の会鹿児島支部事務局長なども務める。
会見では、現職が「必要に応じて実施する」とマニフェスト(政策要領)に掲げた九州電力川内原子力発電所の運転20年延長の是非を問う県民投票を見送ったことに触れ、「公約違反。私たちの声を聞こうともしなかった」と批判するとともに、「命や暮らしが大事にされる鹿児島県をつくりたい。県政の争点はDP跡地への県新総合体育館計画だけではない。鹿児島の将来にかかわる大事な問題が争点化されていない。選択肢を作って道を開くしかない」と立候補決意の経緯を語った。
奄美とも関係がある。小学生の頃、奄美市笠利町の赤木名小で4年間過ごしたという。「自然に囲まれて、幸せな子ども時代を過ごした。理想の子育てができる奄美を基地化してはならない」として自衛隊施設整備、米軍との共同訓練の恒常化などの現状を憂慮。政策を直接訴えるため奄美入りも計画している。