奄美の葬儀研究し博士号

久永さとみさんのカラオケ教室でメンバーから祝福される、立神作造さん(左から3人目)。左上は学位記

千葉市在住の立神さん
「とても興味深い」

 【東京】南大隅町出身で千葉県千葉市在住の立神作造さん(73)がこの春に、奄美の葬儀をテーマに神奈川大学大学院で博士号の学位記を授与した。新民謡・久永さとみさんのカラオケ教室メンバーでもある立神さんは、仲間から祝福を受け、さらなる研究意欲を燃やしていた。

 大隅半島(南大隅町)に生まれ育った立神さんが、奄美の葬送儀礼に興味を抱いたのは2013年の修士論文(放送大学)で奄美大島におけるシマ唄、八月踊りなど民俗芸能の観光資源を研究課題にしたことによるもの。

 それまでよく訪れていた江東区の奄美料理店「奄美の家」(13年閉店)の店主・圓山和昭さん(現龍郷町議)から、龍郷町円で執り行われる告別式と集落の共同墓地で、独特の葬送儀礼が存在する情報を得たことがきっかけ。「土葬して3年後に海岸で骨を洗うなど、とても興味深いもの。もっと詳しく知りたい」。奄美の風習が、研究心に火をつけた。土葬から火葬へと伝統が変化しつつあるものの「奄美大島の葬送儀礼についての研究が、ほとんど見られない」の背景もあったという。

 調査は、15年11月から23年8月まで同町円と宇検村平田・湯湾を中心に奄美市内の墓地、葬儀社、寺院のほか、関連する東京の郷土会で行われた。
土葬の葬儀を体験した集落の長老らへの聞き込みなども精力的に行い、延べ10人以上に聞き取り調査した。

 やがて「神奈川大学大学院・歴史民俗資料学研究科・歴史民俗資料学専攻、立神作造」として学位論文を提出。タイトルは「奄美大島における今日的葬儀の民俗学的研究=龍郷町円および宇検村平田・湯湾の事例を中心として」となっている。

 立神さんがメンバーのカラオケ教室がこのほど品川区のカラオケ店で開催された。久永さんほか、奄美群島関係者から「おめでとう」「目の付け所がいいよね」と祝福の言葉を掛けられ、「もっと研究したいね」と表情を崩していた。「奄美大島では、近世以降、薩摩・鹿児島の影響下にあって、葬儀の本土化が進むなか、変化しながらも今なお、それぞれの地域において伝統的な葬儀のやり方が受け継がれていることが明らかになった」とする、立神さんの論文を後日掲載する。