東京奄美会文化講演会

エネルギッシュに講演する大村智さん。右に映っているのは、東京理科大で研究する当時の姿

講演を終えて、参加者らと記念撮影に臨む大村さん(中央)

出会いと努力の大切さ説く
ノーベル賞の大村特別栄誉教授

 【東京】東京奄美会(大江修造会長)は、このほど、千代田区の主婦会館でノーベル賞受賞者・北里大学特別栄誉教授の大村智さんを講師に、「『一期一会』が人生を拓く」と題した文化講演会を開催した。会場には、200人を超える参加者が詰めかけ、予防、治療薬で世界を救った大村さんのエネルギッシュな人生の歩みに聞き入っていた。

 勝光重文化広報部長による、講演会の趣旨説明、大江会長の「2年先まで講演が詰まっている中で、本当によく来ていただいた」と感謝を込めたあいさつの後、大村さんは大きな拍手に迎えられて登壇。スポーツに夢中となった学生時代を振り返り、「レベルの高い所に身を置くことが大事だったと知った」と語りだした。

 また、恩師からは「どこの大学を出たか、何を学んだかは問題ではない。社会に出たら5年を区切りに勝負をしていくこと」の教えを受けた。大学卒業後、都立高校(定時制)の教師として赴任。ある時、泥だらけの生徒が教室に駆け付けた。「ぎりぎりまで仕事、手を洗う間もなかったんだろう」。

 一念発起した大村さんは、東京理科大を経て、7年遅れて北里研究所へ入所する。遅れを戻すため「誰よりも早く研究所に行き、誰よりも遅くまで残って研究に没頭した」結果、次々と論文を発表し、留学へ。

 その後「俺はこれくらいのことができる」と、米国の大学や企業と交渉し、研修費を捻出していく。多くの人との出会いが、やがてノーベル賞受賞につながったことを語っていった。プロジェクターを駆使した、熱く分かりやすい解説に、参加者は熱心に耳を傾けていた。

 一方、「研究者の嫁になりたいという変わった娘と見合いをした」「米国での駆け引きを、大村方式というんですよ」など、夫人や留学先でのエピソードなどを紹介すると、笑いが起き、和やかな雰囲気に会場は包まれた。最後は、「積み重ね つみ重ねても またつみかさね」という建築構造学者で東京タワーの設計で知られる内藤多仲=たちゅう=の言葉を引用。人との出会いに加え、努力することの大切さを述べて、拍手のなか締めくくった。

 大田区から娘、孫らと参加した女性は、「めったに会えない先生の人柄がにじみ出るお話、とてもためになりましたね」と感動の声を上げていた。

 大村さんは、1935(昭和10)年、山梨県韮崎市生まれ。山梨大学卒業後、東京理科大などを経て、(社)北里研究所に研究職として入所。その後、同研究所理事・所長に就任し、2015年にノーベル生理学・医学賞と文化勲章を受章。

 現在は、北里大学特別栄誉教授のほか、(学)女子美術大学名誉理事長を務めている。また、美術愛好家としても有名で、郷里に収集した絵画等を多数含む「韮崎大村美術館」を建設した。

 その後、階を移して続けて行われた懇親会には、約120人が参加。文化講演会の話題や奄美のことなどを話題に盛り上がっていた。