シンポ「海から考える与論島の未来」

オンラインで行われたトークセッション=与論町=

子ども達が制作した海のPR誌「ヨロンジャーナル」

「海洋教育で何目指すのか考えて」
大金久海岸に「渚の交番」整備へ

 【沖永良部】シンポジウム「海から考える与論島の未来~課題発見とその解決にデザインを活かす~」(ヨロンSC主催)が17日、与論町砂美地来館であった。地元の子ども達が制作した海の魅力を伝えるPR誌「ヨロンジャーナル」の完成と、大金久海岸に建設される海洋教育と観光の拠点施設「渚の交番」について報告。講演では、3710Lab(みなとラボ)代表の田口康大さんが、町と連携して進めている海洋教育について説明し「海洋教育には答えが存在しない。海洋教育で何を目指すのか与論のみんなで探求して欲しい」と話した。

 ヨロンSCは今年度、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で、子ども達を対象に島の海の魅力を発信する体験型プロジェクト「海っこローカルメディア配信プロジェクト」に取り組んできた。

 シンポジウムは3部構成で開催。新型コロナウイルス感染拡大防止のため来場者は50人に限定した。 

 最初に、プロジェクトを通して子ども達が制作したPR誌「ヨロンジャーナル」について事務局の池田香菜さんが説明。同誌は、プロジェクトに参加した町内の児童18人が与論の海の危険な生き物や昔ながらの遊び、浜の数などを地元の人に取材し、まとめたもの。イラスト制作や写真撮影も子ども達が行った。フルカラーで全32ページ。

 活動を振り返った池田さんは「地域の魅力を体験できたことが子ども達にとって一番良かった。これからは発信する力をもっとつけてもらいたい」と話した。

 東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター特任講師で3710Lab代表の田口さんが「与論町における海洋教育について考える」と題してオンラインで講演。「与論町の歴史や文化は海と密接に関わっている。海洋というテーマを学校の授業の中に取り入れやすいため、町にとって海洋教育が地域の総合的、発展的な学びとなり得る」と述べた。また、2014年から海洋教育を実践している岩手県洋野町立中野小学校の事例を紹介し、「子ども達の疑問を追求できるような環境を作ったことで学力が上がった」と話した。

 トークセッションでは、「デザインで生み出す『新しい自然』」をテーマに沖縄県出身でデザイナーの大城健作さんと3710Labの佐藤久美子さんがオンラインで参加、ヨロンSCの池田剛さんも加わり意見交換した。

 来年度、大金久海岸に建設される「渚の交番」のデザインを担当している大城さんは「人工物と自然と人間の関係性を考えて設計した。大金久地区に存在している自然を浮き彫りにした建物になる。そこから現れた景色は新しい自然を生み出してくれる」と述べた。

 「渚の交番」事業は、日本財団の助成を受けて整備。事業費は1億9777万円。カフェやショップなども併設される。施設名は、みんなが集まる場所になってほしいという願いを込め「Muuru(むーる)」に決まった。池田さんは「海離れが進む地元の子ども達に海へ行く機会を作ったり、観光客の増加による環境への負担を軽くしたりするなど町の抱えている課題の解決につなげたい」と期待を込めた。