亡くなった祖母に徳之島での再開誓う

ピザ窯は桜島溶岩を採用。蓄熱性が高く、ピザ生地に適しているという

左から石井涼太さん、岸岡龍輝さん、澤内祐樹さん。店の横には、鶏飯のキッチンカーも

千葉にレストラン開店
岸岡龍輝さん

 【東京】徳之島で祖母を介護しながらイタリア料理店を開店し奮闘していた若者が、祖母の死去に伴い思い出詰まった店を閉じた。その青年がこのほど、生まれ育った千葉に新たにレストラン「イタリアンバルMARIO」(千葉市若葉区東寺山町581―4)をグランドオープンさせた。「ばあちゃんのためにも、ここで頑張って徳之島でまた店を出せるようにしたい」とオーナーとして夢を描いている。

 千葉県で生まれ育った岸岡龍輝さんは、幼い頃から徳之島町亀津に住む祖母・牧野興子さんの実家を夏休みに訪れては、大自然の中で、優しさに包まれるひとときを満喫してきた。そんな「大好きなばあちゃん」が数年前から、迷子になるなど認知症の兆候が見られるように。誰が一人暮らしの興子さんを見守れるのか。本土の親戚が集まった席で手を挙げたのが、岸岡さんだった。

 当時、神奈川県横須賀市で料理人として修業、千葉での開店に向け準備をしていた岸岡さんは店の場所を急ぎ変更。介護の勉強を重ね、緊急時に駆け付けられるよう、祖母の家近くにイタリア料理店「MARIO」本店を2018年3月に立ち上げたのだった。

 孫の真心に穏やかな日々を送っていた興子さんだったが、昨年10月に他界。「8月8日に88歳を祝い、親戚が集まってしばらくでした」。愛する祖母が突然いなくなり、岸岡さんの目の前は真っ暗に。店の営業の張り合いも失い、休業することに決め途方に暮れていた。

 そんなとき、修業時代の仲間で徳之島出身のスタッフ・澤内祐樹さんの「自分が全力でサポートするので、関東にMARIO2号店を出して、人材確保や育成で店の力を付けて、また徳之島に戻りましょう」の言葉に勇気をもらうのだった。

 友情と徳之島の絆で誕生した千葉の店は、JR千葉駅からバスで7分ほど。店舗が集まる地域に3月8日に堂々と登場。建築にも詳しい岸岡さんがこだわったスタイリッシュな雰囲気が漂う。個室も備えカウンター、テーブル席で55人が集える。「2号店をこの千葉で出すことが夢だった」と語る岸岡さんのこだわりは、石窯だ。また、島の材料を使った生パスタも絶品だが、「ばあちゃんから教えてもらった、鶏飯(けいはん)もお薦めです」。

 オープンに当たって10人のアルバイトを採用、徳之島勤務を希望する社員候補も2人いるという。「ここを軌道に乗せて、徳之島の本店を5月には再オープンさせたい」と目を輝かせる岸岡さん。第二の故郷では、島で出会い伴侶となった優香さんが1歳になった桃杏(もあ)ちゃんを育てながら待っている。