消費低迷「やはり不安」

相場急落の中、肉用牛生産者からは対策を求める声も多い

肉用牛生産者 相場急落、対策求める声も

 新型コロナウイルスの影響で、肉用牛の生産者らにも混乱が広がっている。3月の大島地区子牛相場では、平均価格で前回比6万528円減の62万8553円まで急落。新型コロナに伴うインバウンド需要や外食需要の低迷が直撃した形に生産者らは「大変厳しい状況に危機感を持っている。やはり不安だ」と口をそろえる。

 奄美市笠利町節田で約70頭の肉用牛を育てる東義人さん(61)は3月の相場急落に大きな衝撃を受けたという。「去勢などは8・9万円下がったところもある。しばらく好調を維持していただけに驚き。コロナの打撃を実感しただけでなく、危機感を持って取り組まなければならないとも思い知らされた」と話した。

 急激な相場の下落は、経営面にも不安がよぎる。「好調期間が続いたので、新しい牛舎に建て替えたりと大きな投資した仲間も多い。収入源が落ちると生産にも必ず影響は出る。悪循環に陥らなければいいが」と心配そうに話した。

 一方、龍郷町で約50頭の牛を生産する40歳代男性は、相場の下落は今年初めから始まっていたとも話す。「(消費税増税の)駆け込み需要の影響で、価格は1月から落ち込みを見せている、そこにコロナ。先行きの見えない状況になった」と表情を曇らせた。

 男性は、駆け込み需要で市場の在庫もだぶつく中、今後の新たな需要にも懐疑的。「飼料を自給自足に変えたり、血統のいい牛に変えるなど今からでも対策は打つべきだが、トラクターなどのローンも残っている。先行きが分からず怖い」と不安を口にした。

 大島地区3月の子牛セリでは、笠利で去勢が前回比9万7804円減、喜界で同9万4187円減と下落幅が1割を超えた。新型コロナの終息も見えない中、まだ価格の下落は続くと見込む生産者もおり、早めの経済下支えを望む声も多い。

 龍郷町赤尾木で約40年前から生産に携わる村山秋広さん(84)は「昔から比べれば価格はまだまだ高い方。上がる時もあれば下がる時もある」と話し黙々と牧草作業。だが「(肉用牛は)サトウキビに次ぐ奄美の産業。このままでは先細る恐れもある。思い切った対策があってもいいのでは」とも求めた。