子どもの安全に腐心   =現場から=

龍郷町の秋名小学校では、警察や地域住民、学校関係者らが協力する「子ども見守り隊」も始まった

春の全国交通安全運動を迎えて
問われる家庭力・地域力

6日から「春の全国交通安全運動」と「春の地域安全運動」(15日まで)が始まっている。新型コロナウイルスの影響で、出発式などの関連イベントを各地で中止する中、周知は影を潜めた印象もあるが、警察は街頭での指導や取り締まりを中心に地道に運動を推進。特に子どもを狙った犯罪や交通事故には警戒を強め、安全に腐心している。

龍郷町の秋名小学校では今年度から、警察や地域住民、学校関係者らが協力して「子ども見守り隊」を発足させた。奄美署地域課・秋名駐在所の喜多林寛俊巡査長が中心となって、賛同する幾里稲穂老人クラブ(平山勝治代表)、稲葉会(山田仁司代表)など地元の有志ら約40人も加わり、新学期の9日から朝夕の登下校などの見守り活動を始めた。

喜多林巡査長は「地域からは通学路の安全に対する要望の声も多い。警察だけでは目の届かない所もあり、地域の防犯意識高揚につながればとの思いもありお願いした」と経緯を説明。幾里稲穂老ク代表の平山さんは「子どもは地域の宝。大勢が見守る環境を示すことで犯罪者を遠ざけ、安心できる地域になれば」と引き受けた。

この日も午前7時過ぎ、黄色い横断旗を手に担当メンバーらが通学路8カ所にスタンバイ。児童たちと「おはよう。朝ごはんはきちんと食べた?」などと会話を交わしながら、道路の横断を補助したり、歩道のない場所を付き添ったりした。

奄美署生活安全刑事課によると、管内の誘拐などの重大な犯罪の前兆として捉える子どもへの声掛け事案は、「比較的に多い」ともいう。安全対策の基本は「子どもだけや一人だけの状態にならないこと」で、同課・池井翔太警部補は、いつ何時起るかが見通せない事態だからこそ、常日頃の意識が大切だと話す。

同署では同運動期間に合わせて、誘拐などから子ども自身が身を守るための行動を示した防犯標語〝いかのおすし〟の実践を推奨。池井警部補は「不審な人に会ったら110番の家などにちゃんと逃げ込むなど徹底した行動をとってほしい」と話し、見守る側には、管内で発生した事件や事故、防犯パトロールなどに有益な情報をEメールで届ける「あんぜんあんしんメール」の活用なども呼び掛けた。

一方、管内小中学校を対象にした同署交通課主催の交通安全教室が引く手あまたで、学校回りが連日続いている。これまで近くの駐在所からレクチャーに訪れていたが、より現実に即した教室をと交通課が直接指導。実践に役立つ情報を提供し、危険を身近に感じてもらえる学びにしようと、指導方法に工夫を凝らす。

例えば、「車は急に止まれない」。実際に校庭でパトカーを走らせ急ブレーキを踏む。児童たちは、ブレーキを踏んだ地点から止まるまでの距離が分かることで「飛び出しは危険」だと実感する。

学校側へも、繰り返しの指導を忘れずにと要望。継続的な注意喚起はもちろん、下校時に「気をつけて帰りなさい」では、児童らも具体的なイメージはつかめない。「信号機が青になっても車がいないか確かめる」など、年齢層に合わせた実践につながる指導をと手を尽くしている。

だが、同署交通課・竹下直志課長は「学校での指導はあくまで防止の始まり。子どもはすぐ忘れるが、親が繰り返すことで危機感も根付く。親が主体的に関わり、家庭でも意識を高める環境づくりを」とも訴える。

現在同署では、生活安全刑事課と交通課らが一体で通学路などの警戒パトロールを強化している。だが、警察だけの活動では限界もある。これらの取り組みを見て感じることは、子どもの危険を未然に防ぐには、家庭力や地域力も問われているということだ。

新型コロナウイルスの影響で外出する機会も減ってきた。普段はあまり考えることがなかった交通安全について、今一度見つめ直す機会にしてみるというのはどうだろうか。

なお、県の春の全国交通安全運動スローガンは「横断はしっかりよく見てたしかめて」。重点項目には、▽子どもを始めとする歩行者の安全の確保▽高齢運転者などの安全運転の励行▽自転車の安全利用の推進―を掲げている。(青木良貴)