広がる風評被害に悲痛の声

新型コロナ
デマ、ネットや口コミで拡散
サービス自粛も

 奄美市内でも初の感染者が確認されるなど新型コロナウイルスの猛威が続く中、デマを発端とする飲食店などへの風評被害や中傷がインターネットやSNS、口コミなどを通して広がっている。被害を受けた当事者らは「根拠がない」「ただでさえ大変な時期に」など、悲痛な声を上げている。

 奄美市名瀬のある飲食店では、感染者と従業員が知り合いというだけで「店に感染者が来た」と、事実とは異なる情報がSNSなどで拡散した。従業員によると感染者とは1カ月以上会っていない。女性経営者は「そんな事実はないのに、本当にひどい」と憤った。

 拡散を知ったのは市内の感染者が確認された翌18日。知人から「噂が出回っている」と連絡が入った。周りに状況を説明すると一旦は収束するかに思えたが、うわさは瞬く間に拡散。情報には尾ひれがついて「(感染源と考えられる)埼玉の人もいた」など、追い打ちを掛けた。

 店の電話は20件以上鳴り響き、責任を感じた従業員は休職を申し出た。経営者は「誰かが軽い気持ちで流したのかもしれないが無責任」とし、「(うわさの)何を信じればこうなるのか」と嘆いた。

 奄美市の釣りサービス店は、感染者が確認される前からうわさが先行した。「奄美の釣り客に感染者が出た」との怪情報は、県発表の前。同業者というだけで「感染者が店に来た」と的になった。

 男性店主は「電話は10件程度でほとんどが口コミのようだが、やはり理不尽」と困惑。同店は翌日から一部サービスを自粛。すぐさま広がる情報には「怖い」とも憤った。

 安易な誤った情報から、店の風評被害や従業員の中傷につながり営業方針も定まらなくなった。両者は「自分の店だけでなく、周辺一帯も悪いイメージに巻き込まれている。営業の足かせにならないか心配だ」とも口をそろえた。

 時間を経て、状況は落ち着きつつあるが営業を休むとなると「感染者が出たから休業した」とうわさが立つのではないかという恐怖も襲う。しかし、それぞれの事情は異なり従業員も抱えている。経営者らは「状況には注意しながら、風評に屈せず責任を果たしたい」と歯を食いしばった。