沖永良部から上京 始まらない大学生活

長野さんが住む寮の近くにある桜の木(提供写真)=東京都=

「島には帰れない」
不安隠せずも オンライン授業へ準備

 【沖永良部】新型コロナウイルスの感染拡大で、島を出た沖永良部高校の卒業生も影響を受けている。3月下旬、大学進学のために東京に移り住んだ長野光希さん(18)は、いつ始まるかもわからないキャンパスライフに不安を隠せずにいる。

 入学式や、その後の新入生オリエンテーションなど4月に予定されていたイベントは全て中止となった。大学に行ったのは必要書類を受け取りに行った一度きりで、緊急事態宣言が出てからは大学の入構も禁止されている。

 都内での感染者が増加するなか、島に帰ろうとは考えなかったという。「自分も感染しているかもしれないと思うと、島に帰れない」。そのまま東京に残った。

 大学の寮に入り、食事は自炊。3密を防ぐため、寮の共有スペースの利用を避け、先輩や同級生と会う機会もほとんどない。外出は、スーパーでの買い物や支払いで金融機関に行く時だけに絞っている。部屋にはテレビがなく、スマートフォンに毎日届くニュースが情報源だ。

 「一人で寂しいけど、島の友達と連絡を取り合っているので大丈夫」。大阪や福岡、鹿児島などにいる友人らも同じ状況だが「みんな元気にしている」と話した。

 東京に来る前、家族や親せきから餞別をもらった。それがいま大事な生活費になっている。家賃に関しては寮のおかげで、大学近辺のアパートと比較してもかなり安く抑えられているが、当然長くはもたない。「ゴールデンウィークにはアルバイトを始めて、それを生活費と夏休みに帰省するための旅費にするつもりだった」。先の見えない自粛生活で、バイトの面接も受けられない。

 授業開始は5月7日。全ての授業は遠隔(オンライン)で行われる。

 「気分が暗くなりがちだけど、寮の窓から見える桜がきれいで」と声を弾ませた。満開となった桜の花びらが散る様子を眺めながら、授業の準備を進めている。