「スポーツマスクで社会に貢献したい」

「マスクでスマイル」プロジェクトに込めた想い
園田明さん(㈱アイズ・カンパニー代表取締役会長)

 「世の中が大変な状況になっている中で、今自分たちができることで何か社会に貢献したい」
 園田さん=写真=は言葉に熱を込める。バスケットブランド「バイオレーラ」などスポーツウエアを販売する同社が手掛ける「スポーツマスク」の販売が、本格的にスタートしている。販売に伴って「マスクでスマイル」プロジェクトを立ち上げ子供たちへのマスクの無料配布など社会貢献事業にも着手する。先の見えない不安を誰もが抱えている中で、一貫してぶれないのは「スポーツを通じて日本の未来を元気にする」という同社の企業理念だ。

 元々は2カ月ほど前、同社の工場がある中国やタイの工場で働く従業員を守るために考案されたものだった。同社のウエアは汗をかくスポーツ選手の抗菌、防臭の機能を持っている。加えて製造時にレーザーカッターを使用しているため「うちの持っているノウハウをマスクに応用することができた」(園田さん)。
 伸縮性に優れ、長時間の着用でもじゃまにならない。30回の洗濯試験でも抗菌機能を維持しているという結果が出た。また、新たに防護服の開発にも取り組んでいる。

 プロジェクトの第1弾は奄美の未就学児から小中学生を対象に約1万8000枚を無料で配布する。子供たちの命と健康を守るための取り組みで、5月末から6月中旬までに配布できるよう準備を進めている。まずは奄美だが「いずれは鹿児島の全員の子供たちに届けられるようにしたい」と園田さんは考えている。
 第2弾が企業・団体向けのオリジナルマスクの販売だ。こちらは1ロット400枚、単価700円のマスクを企業・団体向けに発売する。収益の一部が子供たちへの無料配布の資金となる。クライアントにとっては、社員・従業員の健康を守るためのアイテムであることが第一。同時に、オリジナルのロゴやコメントなどをマスクに入れることで「一丸となってこのご時世を一緒に乗り越えよう」という士気を高めたり、子供たちを守る活動に協力しているという企業イメージを作ることができる。

 まだ企画段階だが、プロチームのロゴやチームカラーでデザインしたマスクも検討中だ。同社がウエアを提供しているBリーグチームや3×3のチームなどとタイアップで進めている。
 試合をしてその姿をファンに見せることで夢を売っているチームが、その活動の場を奪われている状況だ。ファンが購入するチームグッズの一つとして加えることができれば、ファンサービスの一環として活用できる。いずれリーグ戦が再開されたときは、チームカラーのマスクで会場を埋めつくせば、単に「菌やウイルスから防ぐ」ための機能だけではなく会場の一体感を演出することにもつながるのではないか。

 現在、バスケットのみならず国内のあらゆるスポーツ活動が停滞している中、同社の本業であるウエア販売も決して芳しいものではない。だが「苦しいのはどこも同じ。スポーツマスクを通じて社会貢献しようという気持ちが従業員のモチベーションになっている」と園田さんは語る。「出口」のなかなか見えない時世だが、スポーツマスクに一筋の光を見出している。

(政純一郎)