奄美研究分かりやすく

多様な視点から奄美を紹介する3冊

鹿大学島嶼研ブックレット・生物多様性プロジェクト
3冊の書籍刊行

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター(島嶼研)から3冊の書籍が刊行された。奄美の自然・歴史・文化について分かりやすく紹介されている。

 同センターは昨年3月、東京北斗書房から2冊のブックレットを刊行した。執筆者は鹿児島の島々を研究している研究者。同シリーズでは、専門家による奄美研究が、高校生を含め一般の人に分かりやすく紹介されている。

 鈴木廣志さん著『エビ・ヤドカリ・カニから鹿児島を見る』では、県内に生息する大型甲殻十脚類141種を紹介。火山からサンゴ礁まで、多様な鹿児島の自然環境で進化したエビ・ヤドカリ・カニを知ることができる。

 梁川英俊さん著『奄美島唄入門』は、奄美の文化の象徴ともいえるシマ唄の入門書。「島唄は何を歌っているのか」、「島唄はどこで生まれたのか」など、シマ唄を総合的・客観的に取り扱っている。著者は「奄美にとって島唄とは歴史書であるとともに民族誌でもあり、また言葉の記録でもあり、ふつうの歌の何倍の重さと意味を持った特別な歌」と論じている。

 同大学では2015年度から2019年度、文部科学省特別経費プロジェクト「薩南諸島の生物多様性とその保全に関する教育拠点整備」を実施してきた。最終年度の成果報告として、3月に渡辺芳郎さん編著『奄美群島の歴史・文化・社会的多様性』を南方新社から刊行した。

 同書は奄美群島のこれまで生きてきた人たちに焦点をあてたもの。「歴史編」「文化編」「社会編」の3部から構成されており、13人の研究者によって執筆されている。歴史編では約3万年前から明治時代をカバーしている。

 文化編・社会編は現代の文化・社会を対象にしており、将来の奄美群島のあり方に関する指摘も提言されている。