繁華街、コロナ不況深刻

週末金曜日の夜、通行人がまばらな屋仁川通り(8日午後8時撮影)

期待できない外需より内需を喚起
店舗側不安ぬぐえず

 奄美市名瀬にある奄美大島最大の歓楽街「屋仁川通り」。400㍍ほどの通り沿いに飲食店やラウンジなど約200店舗が軒を連ねるが、緊急事態宣言による移動自粛要請で店舗への客足が途絶え、「コロナ不況」の苦境に立たされている。以前のようなにぎわいを取り戻せるか、かつてない苦難と見通せない不安に店舗や事業者から、「売り上げ減で経営が相当厳しい。地域の下支えが必要」「外需(観光客)が期待できないのであれば内需を回すべき」――。そんな話が聞こえてくる。

 同通りでは新型コロナウイルスの感染拡大防止による外出自粛が直撃し、4月中旬から多くの店舗が臨時休業となっている。「少しでも売り上げの足しになれば」と通り沿いで居酒屋など飲食店によるメニューをテイクアウト(持ち帰り)の販売ブースが目立ち始めたのもこの時期からだ。

 営業形態を変えた狙いは売り上げではない。数種類の弁当を並べる30代店主は「正直、(テイクアウトでの)利益はそれほどでもない。再開後に来店してもらえるようPRの意味がある」と明かす。

 開店から約10年経つ、ある飲食店にはランチの弁当を購入しようと毎日、常連客が足を運ぶ。男性経営者(50)によると知人や友人が馴染み客となっているそうで、「ランチに同窓生などが来店してくれてありがたい」と語る。こうしたつながりが経営を支えてくれることをあらためて実感しているという。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、東京など7都府県に不要不急の移動自粛を呼び掛ける緊急事態宣言が発令され、安倍首相は5月末まで期間を延期することを決めた。

 九州で感染者の確認数が最も少ない鹿児島県(10日現在10人)は、連休明けに臨時休校中だった学校の再開と、施設98種類に要請していた休業協力を規模縮小することを決定した。対象から外れた同通り界隈の事業者は開店準備を進めているが、客足はすぐには戻らないとの見方だ。

 自粛要請を受け、奄美に就航する航空各社は減便・運休措置を取った。東京など都市圏を結ぶLCCは5月末まで運休する方針。いまだ感染拡大の終息がみられない。そのため島内観光関係者は「6月末まで、旅行代理店もツアーを組めないのでは」と見ている。

 今年の3月下旬から「島外来店者お断り」の張り紙を掲げていた、島料理メニューが売りの店舗は従業員の感染リスクから4月以降、休業を続ける。50代店主は「入込が期待できないと来店数は減り、経営危機になる店は他にもあるだろう。終息見通しが立たないので我慢も限界にきた」と吐露する。

 県が呼び掛けた休業要請の対象が縮小された7日夜、屋仁川通りでは、通常営業をする飲食店がいくつか見られたものの通行人の姿はない。開いている店も空席が目立った。

 地元客が訪れる店舗では、いわゆる「内需」を期待できるが、観光客を当て込んだ営業を展開する店舗ではいまのところ「外需」は期待できない。複数の店舗から聞いた「感染終息まで、なんとか持ちこたえたい」との言葉の裏側には常連客の存在がある。では島外の客層を重視する店は淘汰されるべきなのか。

 そうではないと思う。観光機運が高まらないのであれば、内需に期待するしかない。飲食業などに限らず、島内の経済は何らかの形でつながっている。外需が期待できない分、内需で経済を回していく必要性がある。

 全国民一律に現金10万円の支給を決めた「特別定額給付金」の意図は家計支援だ。減収世帯は当然生活費や支払いなどにあてるだろう。

 他県のある知事が「困っている飲食店や休業要請に応じた店舗が終息後、元気になってもらうために使った方がいいのでは」と述べ、地域経済への下支えを呼び掛けた。まったく同感だ。低迷している時こそ、減収の影響がない世帯は地域消費に貢献することが重要ではないか。個人的には支給された現金は消費活動に回してこそ意味を持つと考えるのだが。
 (川内 博文)