徳之島出身者の有志居酒屋の通常営業後押し

通常営業を盛り上げようと集まった常連ら。最前列左が大吉平造さん。(写真撮影のため、一時的に密になっています)

常連らが「前夜祭」開催

 【東京】緊急事態宣言が解除され、都内は「ステップ2」(その後、東京アラートへ)という新たな局面に入った。飲食店が1日から通常営業再開を目指すなか、渋谷区にある居酒屋で常連らが「前夜祭」をこのほど開催した。店主は、駆け付けたボクシングの世界チャンピオンらと共に新たなスタートを祝っていた。また、「後継者」が登場するサプライズもあった。

 「4月、5月は全休。昭和51年から店をやっているが、こんなに休んだことは初めてだよ」。やれやれといった表情で語ったのは、居酒屋「大吉」の店主・大吉平造さん。同店の再開に弾みをつけてもらおうと、会社員・東裕久さんらが企画した「前夜祭」には徳之島出身者らが「密になっては意味がない」ことを気遣い、有志というスタイルで集った。

 満席の半分以下の十数人は、シールドで対面者の飛沫が飛ばないように工夫された店内で近況報告を交わしながら、自慢の料理に舌鼓を打った。中には、元日本郵便副会長などを歴任した稲村公望さんも。また、WBC女子ボクシング世界スーパーフライ級王者の吉田実代さんも娘の実衣菜ちゃんと一緒に訪れた。吉田さんは「ボクシングはコンタクトスポーツなので、練習ができません。孤独なジムワークですね」とコロナ禍での苦労を語っていた。

 80を超えても厨房に立ち続けるほど、体力気力共に自信のある平造さんだが、休業期間のあまりの長さに「閉店も頭の中をよぎった」という。そんな平造さんを勇気づけるように最後は娘・森本加代子さんが、母みはるさんに背中を押される形で「いずれこの店を受け継いでいきたい」と常連らの前で宣言し、大きな拍手を浴びていた。

 「大吉」は、恵比寿駅からほど近く、近隣の会社員にも親しまれる人気店。徳之島や奄美の出身者の心のよりどころにもなっている。