「島バナナ」目立つ褐変症状

地元市場に入荷している「島バナナ」と、今年は例年よりも目立っている果肉の変色・褐変症状

開花時期の気温影響 外観から判断できず
地元市場、半分返品も

奄美では「島バナナ」と呼ばれている在来のバナナは、珍しさから観光客向けのお土産用などとして根強い人気だ。地元市場にも入荷し、比較的高値で競り落とされているが、現在の時期の入荷品では果肉に茶褐色の斑点や筋、固まりなどの褐変=かっぺん=症状が見られるものも混入している。外観からは見分けることができないため競り後、返品される事態も出ており、島外への流通が懸念されている。

奄美のほか沖縄でも栽培されている島バナナは、小笠原諸島からの移入(小笠原品種)とされている。輸入バナナと比べ半分ほどのサイズと小ぶりだが、熟すと濃厚な甘さに程よい酸味と香りがあり、「バナナ好きにはたまらない味」。

さらに観賞の魅力も加わる。通常、店頭に並ぶバナナは黄色に熟したものだが、島バナナは色が青い状態で出荷され、そのまま販売される。青果店などが勧めるのが、購入した青い島バナナをそのまま部屋でつるす方法。1週間ほどで黄色く熟しすぐに食べ頃になることから、熟すまで待つ栽培感覚を室内で楽しめる。

地元市場・名瀬中央青果㈱(森山直樹社長)によると、島バナナは年間を通じて入荷しており、なかでも6~9月の夏場にかけてが多いという。7月に入り、多い時は日量で200~300㌔入荷、3日は270㌔の取扱となった。今年は量が多めなのはブラジル種が出回っているため。バナナの形で丸みがある小笠原種に比べ先が尖がっており、値段は平均単価で、キロ当たり千円で取引されることもある小笠原種より安い(同400~500円)。

ただし小笠原種は、返品されるケースが目立っている。競り落とした買受人は、房の中の数本の皮をむいて果肉の状態を調べるが、通常の白色あるいは黄色と異なる状態のものがあると販売できないと判断、返品している。買受人の一人は「外観からは判断できないため、実際に果肉を見て変色(茶褐色)がないか確認している。試食するとじゃりっとしており、島バナナ特有のまったりとした味わいは感じられない」と話す。

市場側は「8~9月は返品割合が1割程度と少ないのに、現在の時期は半分くらいと多い。返品されたものは生産者に連絡し引き取ってもらう。自家用など島内消費なら問題ないが、島バナナは輸入品より高値でも人気のため、島外に流通しないか心配」と指摘する。変色品の流通について買受人も「今年は例年より目立つだけに、島外に出回らないことを願いたい。販売を優先した結果、こうした粗悪品の島バナナが島外に流通した場合、奄美産のイメージが悪化し産地の信頼を失うだけに、生産者だけでなく流通に携わる関係者も注意してほしい」と呼び掛ける。

関係機関によると、島バナナの果肉に見られる褐変症状は生理障害の一つ。開花時期の気温がポイントになり、現在、市場に入荷しているものは4月ごろに開花しているが、今年は例年よりも気温が低かったのが影響しているという。最低気温が20度以上となる5月中旬以降の開花ならほとんど症状が出ないという調査結果もある。開花時期に必要な気温を確保するには、気温が低い冬場は避けるなど植え付け時期に注意しなければならない。島バナナは植え付け後1年程度で花が咲き、それから3カ月程度で収穫できるとされている。