調査・防除の強化を

県内で広範囲にわたって誘殺が確認されているミカンコミバエ

ミカンコミバエ誘殺 県内44匹、2カ月間で前年上回る
「奄美・沖縄並み、本土・奄美並みに」

 果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの県内での誘殺が増加している。6、7月の2カ月間で現在のところ44匹の誘殺を確認、すでに前年度(35匹)を上回っている。奄美などの南西諸島だけでなく県本土でも確認(鹿児島市など初確認も)されているのが特徴で、タンカンを主とした果樹農業が盛んな奄美大島の農家代表などからは調査・防除の強化が必要として、「奄美は沖縄並み、県本土は奄美並みの取り組みが必要ではないか。常時警戒の体制を」と求めている。

 農林水産省植物防疫所のまとめ(7月13日現在)によると、6月以降の鹿児島県内における誘殺状況の地域別は、奄美大島(加計呂麻島を含む)、中之島(トカラ列島)、屋久島、種子島、黒島(三島村)、甑島(薩摩川内市)と県本土周辺の離島まで島嶼=しょ=部で広範囲に及び、さらに県本土では枕崎市、鹿児島市、薩摩川内市でも確認されている。誘殺数の最多は屋久島の20匹で、奄美は8匹となっている。

 県内での誘殺数の増加について、JAあまみ大島事業本部生産部会連絡協議会果樹専門部会・大海昌平部会長は「東南アジアでミカンコミバエの発生が多いと聞いている。(鹿児島県内で誘殺が多いのは)風が変わり、南風にのって多量に飛来しているのではないか。発生ではなく飛び込みによる誘殺であり、風の影響だろう」とした上で、毎年、誘殺確認後に初動防除をしても誘殺が繰り返されていることから、「奄美では沖縄並みの予防防除(トラップ・寄主果実調査、誘殺するテックス板の地上散布・航空散布を年数回に分けて実施)を、県本土ではトラップ増設や調査強化など奄美並みの取り組みを。誘殺は九州では福岡県でも確認されており、温暖化によってミカンコミバエの飛来範囲が拡大している可能性がある。国内を代表する果樹産地の愛媛県や和歌山県にも及ぶと大打撃となるだけに、拡大を抑え込むためにも調査・防除体制の強化を」と注文する。

 奄美市住用地区の果樹専業農家・元井孝信さんは「2月間でこれだけ多くの誘殺となっている要因を分析すべきではないか。季節風か、偏西風によるものなのか推測でしかない。要因が明確になることで効果的な対策も打ち出せるだけに、国などの専門機関は誘殺要因を探る研究体制にも目を向けてもらいたい」と指摘する。

 なお、農作物に被害を与える害虫では、「サバクトビバッタ」がアフリカやインドで大量発生。国連食糧農業機関(FAO)は西アフリカのモーリタニアからインドの約30カ国で被害が生まれ、2020年に東アフリカで2500万人が、イエメンでは1700万人が飢餓に陥ると警告している。