奄美の「夜の街」も引き続き警戒

奄美の飲食業関係者は休業要請終了後も感染対策を徹底していく(写真は屋仁川通り)

県、休業要請延長せず
「感染対策、変わりなく」

 県は20日、新型コロナウイルス感染拡大防止措置で、今月21日までを期限としていた「接待を伴う飲食店」への休業協力要請を延長しないと決めた。鹿児島市内のショーパブで発生したクラスター(感染者集団)による新規感染者の減少を踏まえたもので、20日の県新型コロナ対策本会議で発表した。奄美の繁華街でも要請を受け休業していた飲食店が再開準備を進めているが、東京など全国レベルでの感染増加を懸念。業界関係者は「感染対策の徹底は店側だけでなく、来店者に対してもこれまで以上に求めたい」と神経をとがらせている。

 今月2日、鹿児島市天文館通りのショーパブで従業員と来店客の感染が相次ぎ、調査で県内初のクラスターと認定。感染者が県本土で広がったことから県は、キャバレーやダンスホール、スナックなど接待を伴う飲食全店舗に対し、8日から21日まで2週間の休業を緊急要請した。

 休業した場合、協力金として中小企業で最大20万円、個人で同10万円が支給される。きょう22日から申請を受け付けるという。

 20日現在、クラスター関連の感染者数は116人、居住先は14市町に及ぶ。なお奄美群島の住民はいない。

 クラスター発生後、2・3次感染が見られたが中旬以降は減少。直近1週間(13~19日)が10万人当たり新規感染者数1・2人(週当たり)と国のガイドラインを下回り、また新たなクラスター発生がないことから要請を延長しない決定につながった。県健康増進課は引き続き、県民に感染防止対策の徹底を呼び掛けている。

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 同市名瀬にある奄美群島最大の歓楽街「屋仁川通り」。飲食店やラウンジなど約200店舗が軒を連ねているが、全国的な感染者数急増を警戒し、店頭に「観光客来店お断り」の張り紙もチラホラ。夏シーズンを前に経済回復への期待と、感染拡大への不安が入り混じる。

 屋仁川近辺の店舗入り口には4月以降、「体調のすぐれない方、2週間以内に島外に移動した方の来店お断り」の張り出しが常態化。また今回の県の要請を受けたためか、「21日まで休業」の張り紙も散見された。

 東京や鹿児島本土でクラスターが発生している現在、業界内では観光客の受け入れに意見が分かれる。万が一、感染者が出た場合の風評被害に強い危機感を募らせる。

 あるラウンジ経営者の一人は「近年は常連客と新規客で売り上げが安定している。片方だけを重視した営業はできないが、従業員の安全確保も大切。他店も観光客の来店を断ることは難しいのでは」と打ち明けた。

 その一方、飲食店の50代男性店主は「常連がメーンなので店頭にお断りの張り紙は出していないが、島外者にはやはり警戒心を持つ。もし(感染者が)出たらと考えると…」と話した。

 同通りの飲食店約90店舗が加盟する市社交業飲食業組合の伊東隆吉理事長は「業界としては引き続き感染防止・対策を徹底していくスタンスに変わりない」とした上で、「店側の事情も理解しながら、行政と連携して、安心して訪問できる『夜の街』づくりにつとめたい」と述べた。