周知不足に戸惑いの声

ピーチ便で来島した観光客ら(22日午後1時ごろ、奄美空港)

「GoToトラベル」スタート
東京からの観光客「対象外気にしない」

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンが22日スタートした。奄美市の奄美空港には、東京や大阪からの直行便などを利用し来島した観光客らが降り立つ一方、東京都など都市部を中心に新型コロナウイルスの感染者が増加するなかでの開始に感染拡大を懸念。キャンペーンの詳細が周知されない状況でのスタートに、「見切り発車」との戸惑いも広がっている。

 同日午後、奄美空港の到着ロビーには格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーション社の東京(成田)―奄美便で来島した観光客らがマスク姿で降り立った。神奈川県から家族3人で訪れた男性(54)は、キャンペーンについて、「旅行はキャンペーンのスタートが決まる前から予定していた。詳細は分からないが、対象となるのであれば利用したい」と話し、東京都内から訪れた女性(36)も「旅行は半年近く前から計画していたこと。東京がキャンペーンの対象外になったことは特段気にしていない。それよりも、東京から来たということで、島の人たちに受け入れてもらえるか不安」と、都市部で感染拡大に歯止めが利かない状況を心配していた。

 帰省のため家族5人で来島した東京都在住の男性(39)も「キャンセルも考えたが、航空チケットの払い戻しができなかった。帰省中はできるだけ外出を控えることにしている」などと話した。

 国は事業への参加業者を登録制にするとしているが、その申請方法などは示されていない。利用者にとっても対象となる宿泊施設などが分からない状況でのスタートとなった。また、事業開始まで約1週間に迫った17日には、感染者が急増する東京都を補助対象から除外、高齢者や団体客なども対象から外すことなどが決まったが、具体的な内容は定まっていない。

 政府の場当たり的な対応に、奄美の観光関係者からも「観光客にどう説明したらいいのか分からない」など戸惑いの声が上がっている。奄美市内のホテルの担当者は「年齢制限などについて問い合わせがあったが、対象になるのか説明できず、高齢夫婦の予約がキャンセルとなった。キャンペーンへの登録もこれからで、どう説明したらいいのか分からない」と話す。

 あまみ大島観光物産連盟には、キャンペーンが開始した同日午前、県から事業者向けのマニュアルに関するメールが届いた。登録手続きや還付金の申請期間などに関する内容や施設内での感染対策の徹底などを求める内容となっているが、同連盟の境田清一郎事務局長は「事業に関する説明もなく開始することは、通常あり得ない。事業者の登録手続きもこれからで、利用者への説明もできない。観光需要の喚起には期待するが、システム的に曖昧な部分が多く、全国的に感染者が増える中、なぜ事業開始を急ぐのか理解に苦しむ」と不満をあらわにした。