不妊中放飼、270万匹に拡大

アリモドキゾウムシの成虫が付着したサツマイモ(資料写真)

アリモドキ根絶事業 島の西部地域で展開
喜界島

 国の助成のもと県が喜界島をモデルに進めている特殊病害虫・アリモドキゾウムシの根絶事業は今年度、不妊虫の放飼数(1週間当たり)を前年度の100万匹から2・7倍の270万匹に拡大する。既に空港周辺など島の西部地域で放飼が進められている。

 農林水産省や県大島支庁の資料によると、アリモドキゾウムシは、熱帯、亜熱帯を中心に広く分布するサツマイモの最も重要な害虫で、国内では1903年に沖縄で被害が確認された。トカラ列島以南の南西諸島および小笠原諸島に分布。イモゾウムシとともに植物防疫法で発生地域から未発生地域への寄主植物の移動が規制されている。アリに似た体長6~7㍉の小さな害虫で、サツマイモの表皮に小さな穴をあけて卵を産みつける。ふ化した幼虫はそのままイモの中に食い入ってトンネル状に食い荒らす。被害イモには強い苦味と独特の悪臭があり、食用・家畜の飼料にもならない。

 喜界島での根絶事業は2001年度からスタート。▽誘殺剤(テックス板)の散布▽放射線照射した不妊虫の放飼▽寄主植物(ノアサガオ、グンバイヒルガオ等)除去―が行われてきたが、18年度からはテックス板に替わる誘殺剤(アリモドキコール粒剤)の全島配布を開始している。

 生息密度が低下している上嘉鉄集落など島の西部の12集落(約1800㌶)で実施されているのが不妊虫の放飼。奄美市名瀬の専用施設で処理された不妊虫は毎週1回、フェリーで喜界島に輸送されている。放飼数は18年度65万匹、19年度100万匹から、20年度は270万匹に拡大、放飼効果が期待されている。

 島の西部以外の密度抑圧防除区(25集落約4000㌶)では、寄主植物の除去作業、誘殺剤による雄除去で生息密度の低下を図った上で、不妊虫放飼へと移行する。

 根絶事業は大島支庁農政普及課特殊病害虫係が担当しているが、県は今年度、喜界事務所に防除専任の職員1人を配置。早期根絶に向けて地元との連携が不可欠な中、専任職員の配置で喜界町との連携を強化しての取り組み(不妊虫放飼、誘殺剤散布、生息状況調査など)を推進していく。