宿泊客が江戸芸かっぽれ披露

観客を前にかっぽれを披露する市川さん

舞踊ステージ 伝統芸通し交流深める
「ティダムーン」

 奄美市笠利町のリゾートホテル「ティダムーン」で5日夕、大道芸「江戸芸かっぽれ」の舞踊ステージが行われた。ホテル入口の屋外に設けられた特設会場には、宿泊客や地域住民ら約40人が集まり、奄美では珍しい江戸の芸能を楽しんだ。

 披露したのは、神奈川県在住で同ホテル宿泊客の市川直久さん(71)。奄美を訪れるたびに、同ホテルを利用している市川さんが、かっぽれを踊っていることを知ったホテルスタッフが、「奄美の人たちに披露してもらおう」と提案、市川さんが快諾した。

 かっぽれは、江戸末期に歌舞伎や寄席などで踊られ、明治期に大衆芸能として、広く知られるようになった。着物姿で登場した市川さんは、かっぽれのほか、スーダラ節など軽快な踊りで約30分間のステージを披露。合間には軽妙なトークで笑いを誘い、観客を魅了した。

 昨年5月の初来島以来、3回目の来島という市川さんは、奄美の自然と島の人たちの優しさに触れ、奄美ファンとなった。地元の神奈川県では、経営する文房具店に演芸場をつくり落語などの寄席を開くほか、老人ホームなどの慰問活動も続けている。

 しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で、ほとんどの活動が休止。自慢のステージも披露できずにいただけに、市川さんは「こんな素晴らしい機会を作っていただき感謝したい。江戸文化に触れる機会のない奄美の人たちに少しでもかっぽれの楽しさを知ってもらえたらうれしい」と笑顔で話した。

 同ホテルの肥後勝代代表取締役は「遠く離れた関東の芸能を奄美で見る機会をつくることができて良かった。地域の人たちとの交流を大切に、奄美を訪れた人たちに島の魅力を伝えていきたい」と話していた。