世界自然遺産推薦地の亜熱帯照葉樹の森(奄美大島)
国連教育・科学・文化機関(ユネスコ、本部・パリ)は2日、新型コロナウイルスの感染拡大で今年の開催を延期していた世界遺産委員会について、来年6月から7月に中国で開くことを決めた。2020年と21年分の候補について審査する見込み。奄美・沖縄も世界自然遺産として登録の可否が審査される予定だ。
日程が決定した来年の世界遺産委では、日本政府が世界自然遺産の候補として推薦している「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄両県)と、世界文化遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森県、岩手県、秋田県)などが審査される見通し。
世界自然遺産登録に向けては13年から動き出した。同年12月、4島(奄美大島、徳之島、沖縄島北部(やんばる)、西表島)を登録候補地に選定。16年には奄美群島の国立公園指定の動きが進んだ。
17年、政府は推薦書をユネスコ世界遺産センターに提出。1度目の挑戦だった。奄美・沖縄の推薦地は、「広大な亜熱帯照葉樹林内にアマミノクロウサギやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなど多くの世界的な希少種が生息する多様性」を価値として挙げている。同年、IUCN(ユネスコの諮問機関=国際自然保護連合)が現地調査を実施。18年、同機関から「登録延期」の勧告を受け、政府は推薦書を取り下げ、登録は叶わなかった。
IUCNから指摘された希少種保護や外来種対策、推薦地域の飛び地解消などを進め、推薦書をまとめ直し、政府は19年2月に同センターに再提出。登録後に懸念される過剰利用(オーバーユース。観光客が特定の登山道などに集中することにより、自然が荒らされてしまうこと)についてはルール作りも進められた。
19年秋(10月5~12日)には再度、IUCNの現地調査を受け、今年に入り例年5月ごろにある勧告を待つ状況だった。しかし、新型コロナの感染拡大により今年の世界遺産委の開催が延期され、例年、委員会の6週間前までに行われるIUCNの勧告も先送りされた。
なお、IUCNは候補地を「登録妥当」「情報照会(差し戻し)」「登録延期」「登録不可」の4段階で評価し、勧告。この勧告は登録の可否に大きな影響を持ち、委員会で評価が覆ることは少ない。
次の委員会は来年6~7月にかけて、中国・福建省で開かれることが決定。これを受けて塩田康一知事は「県では、登録に向けて国、沖縄県、地元市町村、関係団体等と連携を図りながら、世界自然遺産としての価値の維持、自然環境の保全と利用の両立、地域の機運醸成のための取り組みを多年にわたって推進してきた」とし、世界遺産委の開催は「登録に向けた関係者のこれまでの取り組みが実を結ぶ最終段階の極めて重要なものと認識している。引き続き、国等関係機関との連携をさらに密にしながら、奄美の世界自然遺産登録に向け、着実に取り組む」との談話を発表している。
朝山毅・奄美群島広域事務組合管理者(奄美市長)の談話 わが国、そして全世界が一丸となり、このコロナ禍を克服した上で世界遺産委員会が開催されることを願うとともに、この奄美群島においても世界自然遺産登録を目指し、自然環境の保全と持続可能な利用に向け、引き続き、関係機関や住民と連携を図り、取り組みを進めたい
高岡秀規・大島郡町村会会長の談話 世界自然遺産登録に向けて、今後とも関係機関と連携を重ね、外来種対策をはじめとする必要な対策等について、これまでの取り組みを継続する。新型コロナの一日も早い収束を願うとともに、奄美群島民、鹿児島県民および沖縄県民の念願である登録実現に尽力していく