島尾敏雄記念講演会

島尾の奄美への思いなどについて考察した小嶋教授

 

 
「奄美の言葉の豊かさ伝えたかった」
名桜大・小嶋教授が考察
日記などから思い読み解く

 

 

 県立図書館奄美分館の初代館長を務め、奄美大島で執筆活動などを続けた作家・島尾敏雄の記念講演会が8日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。名桜大学国際学群の小嶋洋輔教授が「文化継承者としての島尾敏雄」と題して講演。島尾が残した日記や取材時の記録などを書いたノート、妻・ミホの語りを再現し綴った『奄美の昔ばなし』などを読み解きながら、島尾の文学や奄美の方言に対する思いなどを考察した。

 講演会は島尾の命日(11月12日)に合わせて同館1階の島尾敏雄記念室で開かれている企画展の一環。講演会には島尾文学のファンや郷土史研究の関係者ら約30人が参加した。

 小嶋教授は、島尾の日記やノートなどから「奄美の言葉が発する音を意識し、島の人たちの語り口をそのまま残すことを目指していた」と指摘、その背景に「奄美の人々が話す言葉に感じた、生き生きとした言葉の豊かさを残し、伝えたいという思いが強かったのではないか」と考察。

 妻・ミホが語る加計呂麻島・押角集落の昔話を、カタカナなどを多用して表記している点にも注目し、「語りの場を再現することで、奄美で語られたままを残したいという思いが伝わってくる」などと話した。

 一方で、「中央の文学界や奄美の人々からも、島の知識人としての役割を求められたことで、
民俗学や文化評論の先駆者として役割を担うことになった」と島尾の評価が一面的であることを指摘。「島尾は奄美の言葉の持つ魅力を文学的に伝える、言語継承者として存在しているのではないか」などと結論付けた。

 同図書館では島尾敏雄記念室企画展を開催中。島尾が書いた1955~75年まで約20年間の日記(複製版)を展示。島尾の心情に触れられる貴重な資料で、日記を通して当時の島の暮らしや文化も垣間見ることができる。17日まで。