奄美大島の魚類種「日本一」

公開講座で講演した鹿大総合研究博物館の本村浩之館長(左)

鹿大・本村浩之館長が講演 1615種、魚類多様性示す
放送大学公開講座

 放送大学鹿児島学習センター公開講座「鹿児島と琉球列島の魚類多様性」が15日、県立奄美図書館研修室で開かれ、魚類分類学が専門の鹿児島大学総合研究博物館の本村浩之館長が講演した。本村館長は「標本に基づく過去の記録を網羅し、5年間の大規模プロジェクトによる採集調査・研究により、奄美大島で確認された魚類は1615種あり、日本で1番多い。魚類多様性を示している」と述べた。

 公開講座は、放送大学講座の受講生5人、一般参加者18人の計23人が受講し、うち子ども1人も受講した。

 本村館長は、琉球列島の魚類多様性と分布特性の解明に関して①各島嶼・海域に生息する種を把握する(フィールド調査、博物館所蔵の標本調査、文献調査)②各島嶼・海域の魚類相を日本各地の魚類相と比較解析する(種レベルの検討、個体群レベルの検討)③環境や地史との関連づけ④継続調査する―ことが重要と指摘した。

 また、魚種調査の重要点について「目視観察や撮影写真では、魚種同定(判別)は難しく、標本が重要」「日本の魚の標本は、アメリカ、ヨーロッパの博物館にたくさんある」と述べた。

 「奄美大島の魚類多様性研究史」(2018年)によると、奄美大島では1615種の魚種が記載されており、「日本で一番多い」。奄美大島最古の新種は「ナガノゴリ」で、大正時代に採集され、昭和2年に記載された。「屋久島の魚類多様性研究史」によると、1282種の魚種が記載されている。「証拠標本が少ない」。

 本村館長によると、鹿大には約20万点の魚の標本がある。1固有番号で管理し、▽標本(魚体)▽組織サンプル(DNA解析用)▽画像(生鮮時)▽標本データ―を保管。奄美大島では、前川水産(奄美市名瀬)の前川隆則代表が珍しいとみられる魚を提供し、珍魚発見、標本保管に協力している。「前川代表の協力に感謝している。提供を受けた魚の中には、現在研究中の魚もある」(本村館長)。

 魚の分布に黒潮が影響していることも詳細に説明した。

 本村館長は調査の結果、「屋久島から奄美群島、沖縄の与那国島までは同じ海産魚類地理区」と述べた。

 また、外来魚の問題点も指摘した。この中で「マダイは奄美群島には『自然分布しない』魚種」と指摘した。